外国語を学ぶときに,その言語の発音の特徴を理解し,発音をコピーすることは非常に大切なことです。
英語を学習するときに,日本人がネックとなる2つのポイント。
日本語にない英語の発音をしっかりと理解しないことと、発音練習し身につけないことです。
自分が発音できて,それを相手に伝えることができることが基本です。
英語は日本語の話し方と違った話し方をしなければなりません。
これをしっかりと意識すれば,自分の耳で聞いた英語が自然に発音できるようになります。
<英語をどうやって話しているかを知れ!>
小平市にあった防衛省の語学学校は,自衛官にとっては英語通訳への登竜門,別名「英語の虎の穴」。全国から学生が集められ,2クラス40人の編成。クラス替えなどもあり,人間関係をうまく構築することも交流から学んでいく。
その最初の授業を担当するのが,Swatchであり,最初から学生の度肝を抜く授業となる。ウイスコンシン大学から導入したスピーチクリニックを体験させる。
ウイスコンシン大学のスピーチクリニックは,1980年代の大学生が母国語である英語がうまく話せない,あるいは表現できないのではないかという仮説から出た教育法。
アメリカ人の大学生も,英語の話し方の訓練をしなければ,英語を操れないということだったのです。オードリ・ヘップバーン主演の映画「マイフェア―レディ」に通じるものがあります。
下町訛りの花売り娘が,英語の話し方の特訓を受け,女王主催の舞踏会にデビューするという物語。原作はバーナードショウで,イギリスの階級社会と言葉の関係を皮肉ったもの。
英語の発音を一つ一つ教えて,英語の発音を身に着ける。
まさに英語の話し方の訓練を最初の授業でするのです。私は学生の父であり母であり,親せきのオジサンであり,教官なのです。
<日本語にLとRの発音はありません>
最初の授業で取り組むのが,RとLの発音である。
英語のLの発音は,2種類の舌の動きがある。
一つは,口蓋の前歯の後ろに舌を密着させて,「う~」とうなること。
次に,口蓋から舌を離して,まっすぐ下に舌を下げる。LOVEの最初のLの発音となる。
次に,舌を下から口蓋の前歯の後ろに移動させる発音。
舌を下から丸める感じ。Myselfのセルフの「エル」の部分にあたる。
日本語で「セルフ」と発音するのではなく,セ~と音を伸ばしながら,舌を上に上げていくときに変化する音が2番目のLの発音である。
次に,お待ちかねのRの発音であるが,これも英語の発音教範にはあまた説明がある。
さらに,説明されても,まして文章ではなかなか伝わらない発音方法である。
これには面白い逸話があるので,お話ししよう。
学生を教えて3か月も立つと卒業も直前となり,何かと懇親会が増えてくる。私も招待を受け学生と宴を共にする。
宴もたけなわとなり,そろそろお開きという段階でトイレに席を立つ。
トイレで一緒になったのが,「Rの発音がイマイチ」というM学生。
少々飲み過ぎたらしく,顔を真っ赤にして,トイレの洗面台の前で立っている。
‟Are you all right?” と声をかけると,“Yes, sir”と言って洗面台に顔をふせた。
次の瞬間,嘔吐。「おええええ~」と声を挙げた。下品な話で恐縮です。(汗)
それを聞いてSwatchはひらめいた!「これがRの発音だ!」
次の朝,アイスクリームの木のスプーンを用意して,授業でM学生の名前を呼んだ。
あなたは,舌圧子(ぜつあつし)で医者から舌を押されて「うえぇ!」と声を挙げたことがありますか。そんな感じです。笑
舌の奥に指を入れたりして吐き気を催すことを「嘔吐反射」といいます。その時に出る声,音が英語のRの発音に極めて近い。咽喉を開放して舌を丸くする動作です。
M学生の横に行き,アイスクリームの木のスプーンを取り出し,Ⅿ学生に口を開けさせ,舌の奥をスプーンで強く抑えた。軽い嘔吐反射が起き,M学生の口から「うええR」という音が漏れた。
すかさず,「今のがRの発音である」とクラスに伝える。爆笑とともに,学生が真似をする。
UeeeRから雑音を取り,Rを響くように発音しよう!遊びを覚えた子供のように学生が練習する。
<英語の発音を耳で覚えて,発音できるように練習する>
英語の発音を耳で覚えて,それを再現できる。
言ってみれば単純な話です。
学問でも研究でも,科学的根拠に基づく理論があり,それを再現する(再現性といいます)ことで,この世は成り立っています。
英語も偶然に発音できるのではなく,いつでもその音を再現できれば良いのですね。
日本人がLとRの発音に苦手意識があるのは,2つの原因がありましたね。
まずは,「LとRが聞き分けることができない」と思い込んでいるから。
中学校の時に,英語担当の教員がLとRの発音は難しいと授業でいったことを脳に刷り込まれているかもしれません。
実際には,英語のLもR発音も難しいことではありません。けれど,その音を再現するために練習はしない。
他の言語と比べてみると良くわかります。
特にRの発音は,フランス語,ドイツ語,スペイン語,イタリア語などでは,巻き舌になります。巻き舌も日常の日本語には使いません。
ですから,それらの言語を学習するときは,一生懸命Rの発音を学生は練習します。
英語は,中学校の授業でRの発音は難しいと刷り込まれ,練習しないまま高校大学へと進むことになります。
気が付くとRの発音は,練習もせず取り残されているのです。
<まずは,LとRの発音練習で新たな一歩を!>
LもRの発音も,いきなりその音が口から出るのではなく,ある準備が必要です。
日本語は,唇をあまり動かさなくても母音がしっかりと発音されていれば通じます。
英語は,Lを発音するときは,前歯の後ろの口蓋の部分に舌の先を押し付けるという準備が必要です。その時ルーとうなるのが発音のコツになります。
Rは,舌の準備ではなく,唇の準備が必要です。
唇をすぼめてWの発音する形を作ります。そして,ウーとうなります。
こうすることで,舌が口の中で中央にくぼみを作る形になります・
そして,Rの単語を発音します。
例えば,right なら,ウーright(ウーライト)と発音すれば自然にRの発音ができます。
聞き取りの時は,この「うー」という音を語頭に探せばよいのです。
このように,英語の発音はいきなり発音できるものではなく,音を出す準備が必要なのです。それを意識しながら,話すことで正確な発音ができるようになります。
と同時にヒアリング能力も向上します。長年のトラウマや刷り込みを払しょくしましょう。
是非,チャレンジしてみてください。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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