数十年前、日米の国防ミィテーングで一緒に仕事をしたラスコー氏と,最近英語教授法で良くやり取りをしている。
彼が強調する英語勉強法が「英語の勉強は,英語漬けに限る」という説。
例えばアメリカの番組を英語の字幕付きで観る。
それもひたすら見続けるのである。
彼は,日本語をマスターしたい友人に,日本のTV番組を日本語で観ることを勧めるそうである。
つまり言語学習は,英語も日本語も変わらないということ。まずは耳で学ぶこと!
「最初から英語を,理解することはないのだ!それは間違った学習法だ」
と彼は言い切ります。
更に,英語学習に一番大事なことは何か,と論が進んでいきます。
日本人の英語学習で一番大事なことは,実は,あなたが一番苦手とすることだったのです。
<外国語の習得方法は,タモリ氏に学べ!>
“Listen to how it’s spoken.”
だと彼は主張します。
英語学習で一番大事なことは,(ネイティヴが)「どうやって英語を話しているかを聞き取ることだ!」というのです。
ひたすら英語サウンドを聞いてみる。英語の音を確認する。
さらにどうやって発音しているかを目で確かめ,どのように発音しているかを真似してみる。
以前の記事「外国人の真似で英語を磨く!」に詳しく書いてあります。
ラスコー氏は,そこを指摘してくれているのです。
母語影響は,母国語の一番特徴的なところが他の言語に残るということです。
インド人の話す英語は,Rの巻き舌がしっかりと残っています。
自分にとっての外国語の発音をどうすれば,真似できるか。それがポイントなのです。
これを実践して,磨き上げ芸にしたのがタモリ氏です。
タモリ氏が,フランス人の真似をするときに使う「ボンジュール,麻布ジュバン,肌ジュバン」という意味のないフレーズがフランス語っぽく聞こえるのは,彼の外国語真似の真骨頂です。
彼の十八番になっている外国人が麻雀をするときの会話で,それぞれの国の言語の特徴をつかんだ話芸は,彼の外国語に対する研究と練習の成果ですね。
タモリ氏の言語感覚だけで,そういった外国語の物まねはできません。彼は,英語,中国語,フランス語,ドイツ語などの基礎知識の上に,発音を完璧に真似してそれをリピートしているのです。
言語は,ネイティヴの話し方を良く聞き,話し方,口の動かし方,舌の動作,顔の筋肉の動き,更に呼吸法まで,忠実に再現することにかかっています。タモリ氏はそれが天才的にうまい。
そういった基礎トレーニングが,外国語を話す最初にしなければならないトレーニングだと,ラスコー氏は指摘してくれます。発音練習が,最初のトレーニングなのです。
<英語は,両親からの贈り物>
ラスコー氏は,さらに,言語習得は,学校で習うのではなく,両親から教わるものだと言います。
“We learned to speak from our parents and other people.”
特に母親から毎日話し方を教えてもらって,子供は言語を獲得します。女性は言語感覚に優れていることもありますが,授乳など接する時間が多いので子供は母親から言語を引き継ぎます。
もう一つ例を挙げましょう。Swatchが,アメリカの軍大学に留学した時に,500名近い同期生がいましたが,祖先がアメリカに移民してきた学生と多く知り合いました。
ある時,アメリカの文化,言語,さらにアクセント(訛り)について話しているときに,アフリカン・アメリカンの女性兵士から言われた言葉が今でも耳に残っています。
“We learned to speak from our parents and my parents also learned from their parents.
That’s our family history”
(私たち家族は,両親から話し方を学んだ。両親も同じように親から話し方を学んだ。アクセントは,私たちが親から引き継いだもの。それが私たちの家族のヒストリーなの!)
正確な英語,美しい英語,御託を並べていた自分を本当に恥ずかしく感じた瞬間です。また,自分の少し甘ったるい感じの話し方は,母から教わった日本語だと強く意識した瞬間でした。まさに,「アクセントは,家族の歴史である。」深い言葉でした。
口移しで両親は,私たちに日本語の発音と話し方を教えてくれたのです。感謝です。
言語は,自分が母のように話そうとして無心で学んだ結果です。
<耳で覚えた英語は通じる>
このように耳で覚えた言語は,次の世代に引き継がれていきます。そこに言葉の伝承がある。アフリカン・アメリカンの同期生の「アクセントは我が家の歴史」は,私の英語観を一変させました。
耳で覚えることで,それを完璧にまねて話すことができるようになり,忘れないものとなります。
それを家族の歴史,移民の歴史といった世界史の中で取らえるその女性兵士の感覚には脱帽です。
日本語にない発音を認識し,それを両親から習うように,一つひとつ練習していけば,早期に英語らしい発音を体得できます。その言語感覚が,大切なのです。
アメリカ人のラスコー氏がいう,「意味を考えるのではなく,まずは発音できることが重要」という考え方が役に立ちます。そのためには,「英語漬けの生活」をする。
英語漬けの生活とは,24時間英語で生活するという意味ではありません。教科書の英語ではなく,生きた英語,生活に密着した英語を,一日1回は触れる生活をすることです。
それがアメリカのテレビドラマや映画であれば,興味もわき継続することも可能です。学習するのではなく,楽しむことも大切な要素になります。
そうやって覚えた英語の発音は,必ず通じます。そして,相手のアメリカ人の言っていることも聞き取ることができます。さらに,相手の話し方の癖もなんとなく感じるようになります。
多くのアメリカ人と会話をすれば,分かりやすい英語,聞き取りやすい英語,逆に癖のある英語など,色々な話し方と遭遇することになります。それが蓄積されていきます。
多様性を認め,相手をリスペクトする。そうやってコミュニケーション能力を上げていきましょう
<英語の語彙力は,人間的な成長とともに伸びる>
英語習得の早道は,発音を覚えること。それを実際に発音できるようになることで,相手に理解しやすい英語を話すことができ,リスニング能力も上がります。
難しい構文やフレーズを覚えるのは,英語がある程度話せるようになってからで大丈夫。人間の成長と同じように,言葉も成長していきます。つまり,語彙力も人間性に比例して増えていくのだと思います。
英語の基礎である発音と表現方法が分かってくれば,更に自分の内面を伝えたいと感じます。そのとき自分の気持ちをどう表現するかを一つ一つ英語にしていく作業が必要です。
自分が話している英語は,日常会話ができる程度。自分の語彙力は,自分の考えることの半分ぐらいしか表現できないといった反省が出てくれば,それは英語学習のモチベーションにつながります。
そこから新たな段階に進んでいきます。
まずは,英語の発音を耳で覚え,その音を忠実に再現するようなトレーニングをしてみませんか。
耳で覚えた英語は必ず通じます。その自信を得た時に,英語ペラペラの世界は大きく広がります。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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