ここニューヨークでは、レストランなどで、お客さんが、お店のウェイト・スタッフにナイスに接することがとても多いです。まず「How are you?」から聞いて、お名前を聞いて、それからオーダーに入ったりします。
ウェイトレスさんに、「あなたのネイル、可愛いわね、自分でやるの?」などと話しかける女性もいたりします。
そんな会話から始めると、ただオーダーを告げるだけではなくて、なんとなく、そのレストランでの夜自体が、楽しいひとときになりそうな予感がします。
まったく逆のケースですが、以前、ダウンタウンの日本風居酒屋レストランで、お客さんとして入ってきた若い日本人の青年が、どっかり腰を下ろすなり、「俺、ポン酒」と大きな声で告げたのにはびっくりしました。
ニューヨークですから、普通ならウェイト・スタッフさんが来るまで静かに待ち、そこから「Hi, How are you?」などの多少の会話に始まって、「今日は長い1日だったけど、やっと大好きなこの店に来れたよ!」とか会話があっても良いのですが、全く何もなく、「アイアムポンシュ」でした(笑)
「あと水ね、水」と彼の注文は続きます。
私の周りでは、こういうオーダーの仕方をする人はあまり見たことがなく、アメリカではちょっと違うような気がしました。
そう言えば、日本だと、「お客様は神様です」と言う言葉がありましたね。また、この青年のお父様がとても有名な偉い方で、このような物言いをされるのを幼い頃からずっと見ていたので、このように成長されたのかもしれませんね。
「横柄な物言い」「タメ口」「フレンドリー」、もちろんいろいろなケースがあるとは思いますが、アメリカでは全体として、お客様がお店のウェイト・スタッフを、しっかりとレスペクトしているような気がします。
20%ものチップを差し上げる上に、です。
自分、また自分の子供たちや若い甥、姪、ファミリーメンバーの誰かが、例えば大学の学費を、ウェイト・スタッフのようなサイドジョブで捻出してきたのを、知っているからです。
それで結局、ウェイト・スタッフさんも雰囲気が良ければ、そのお客様もまたリピーターになってくれるし、なんてことないようなちょっとした普段の会話でも、人と交わして、笑顔で相槌を打ってもらったりするだけで、気分て良くなるものですものね。
アメリカでは、バーテンダーさんて、そのバー・レストランの顔です。そして彼は、あらゆる常連客の最近の情報から、住んでいるところまで、飼っている犬の種類とか、家族の事まで何でも知っていたりします(笑)。
ただ食べに行くだけ、飲みに行くだけのお店じゃなくて、おしゃべりが楽しめるお店が近くにあると、それって財産ですよね。
店に入るなり、「ヘイ、カヨ!ウェルカム・ホーム!」なんて言ってくれる店、そうたくさんはありません。
「おかえり、カヨ!」なんて行ってくれると、
まず「来てよかった」と言う気持ちから、その店でのひと時が始まります。
私も数軒、また行きたいなと思える店が近所にあったのですが、パンデミックで、なくなってしまいました。これはとても大きなことです。友人を失ったような感じです。また、新しいお店を発掘しなければ、です。
お店を発掘する際、私の好みですが、あまりにも新しくて外装がきれいな店は、ちょっと気遅れがします。また、ウェイト・スタッフがあまりにもキャピで若くて輝いているのも、ちょっと違います。普通に古めのお店で、普通の大人のウェイトスタッフがいるところがいいです。(笑)
長かったパンデミックと、その後のインフレもあり、ニューヨークで外食をしなくなってずいぶん経ちます。また以前のように、外で楽しく飲んだり食べたりする時が、来るでしょうか。
トランプ政権が始まったし。まぁ、無い物ねだりをするよりも、自分の料理の腕を磨くのが、今は1番大切なのかも。(笑)
日本では、誰とも会話しなくて済むコンピュータ制御のレストラン、などもできているそうですね。ロボットが料理を黙って運んできてくれるそうですね。頭痛がしそうです。(笑)
それではまた来週♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。