医療費が世界一高い、と言われているアメリカですが、アメリカには、日本と違って、日本のような国民健康保険制度がありません。
アメリカでの健康保険とは、医療保険にお金を支払うことのできる、そこまで金銭的に余裕のある人々が自分で探して加入する、高額な贅沢品の1つです。
歯科医も高額
アメリカでは、デンテスト(歯科医)に通えるのも、お金持ちに限られていました。スラム街に行けば、歯がちゃんとない人々がたくさんいました。アメリカでは医療はビジネスなので、歯も、治療はとても高額です。
例えば、ちょっと虫歯が見つかったと言う程度で、レントゲンでチェックして、ほんの少し削って治療してもらうだけで、いとも簡単に300ドル(約45,000円)とか、請求されます。
奥歯が痛んできているのは、寝ている間の歯ぎしりが原因だろうと言われ、それを少しでも防いだ方が良いのでプラスチック製のマウスピースをオーダーメイドで作るよう勧められ、それは1つ800ドル(約12万円)でした。
エリートでないと、なかなかデンテストには行けないので、もし、とても痛むようになれば、とりあえず抜いてしまうのですね。アメリカでは、高収入があれば、高額の医療保険に入れる、というわけです。
シニア向け健康保険プログラム
シニアと呼ばれる高齢になってくると、保険らしきものはあり、メディケアと呼ばれます。メディケアは、65歳以上および、末期腎疾患や筋萎縮性側索硬化症を含む障害を持つ若い人々のための、米国の連邦健康保険プログラムです。
プランA〜Dまであり、まずプランAは病院でかかる費用、プランBはドクターに診てもらうための医療サービスの費用、プランCはアドバンテージといって、メディケアに承認された一般保険会社によるプランだそうで、ちょっと負荷価値がついていたりする模様。
そして、プランDが、お薬にかかる費用、と言う大きな枠組みがあり、自分に合ったプランを選ぶそうです。
まずはホームドクター
ご存知の方もおられるかもしれませんが、アメリカでは、日本のように、いきなり総合病院や、皮膚科、耳鼻科のような専門の病院に行ったりするのではなく、まずプライマリ・ドクター(家庭医)に行き、そこでスペシャリスト(専門医)を紹介してもらう形になります。
その「ドクターズ・オフィス」と「病院」は別ものです。
診療を受けた後、「薬局」は病院とは別の場所にあって、その薬局がとても離れていることもあったり、長蛇の列で待たされることも、充分あります。
ディケアも、収入に見合った金額を支払う必要があり、毎月決められた額のお金を払いますし、普通はスペシャリストのドクター(プライマリー「家庭医」以外のドクター)に診察してもらいに行く場合、コーペイと言って、1回35ドル(約5250円)が毎回、かかります。
保険適用外の新薬
薬品は日本と比べると高額で、特にアメリカの病院は新薬をどんどん患者に与えますので、保険外になることもしばしばだそうです。
メディケアを使っている70歳の知り合いは、糖尿病にとても良い薬が出ているからそれを飲みなさいと言われ、薬局で聞いてみたところ、それはメディケアではカバーされない薬で、自費で3ヶ月分で700ドル(約105,000円)と言われ、ドクターに頼んで、古い保険内でカバーされるお薬に変えてもらったそうです。
最先端の医療技術や薬を持つと言われているアメリカ。しかしながら、すべてお財布次第。日本のような高額医療保障制度もありませんし、お金持ちは、いくらでも良い治療が受けられるということになります。
トランプ政権で・・・
これに拍車をかける出来事が、今回の大統領選挙です。
今回のアメリカ大統領選挙では、残念ながら民主党が敗退し、こういう保険制度などにかかる費用を少しでも減らそう、と言う共和党が勝利しました。
大統領を始め、上院下院とも共和党が過半数を占めたので、この高齢者用メディケアのシステムなども、「持たざる者」にとってはどんどん厳しくなっていくもの、と思われます。
トランプ新政権では、トランプ氏の知り合いがどんどん閣僚に抜擢され、専門分野でない方も多く、しっちゃかめっちゃかな内閣になっていくだろう、とニューヨーカーの多くは危惧しています。
さて、この1ヵ月ちょっとの就任期間で、初日には26枚の大統領令を出したそうで、バイロン政権下での、あらゆることをひっくり返し、イーロン・マスクの政府効率化省雇用など、想像を絶するすごいことになっています。
政治を全てビジネスとしてやっていこうというトランプの策略が、世界でどこまで通用するのか、ニューヨークでは反対のデモが大きく行われていますが、今それをやってもどうしようもないし、物事がうまく運んでくれますように、祈るばかりです。
それではまた来週♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。