今回、日本を訪れたのは9月の半ば。お天気も晴れ空が素晴らしく、まだ暑いと感じるぐらいの日もあり、各所クーラーが入っているにしても、アメリカの冷凍庫のようなエアコンではないので、カラダに優しい。
すっかり凍りつく冬を目の前にした秋のニューヨークとは、ちょっと違いますね。私は温かい季節が好きですので、この日本の9月の陽射しと風が、毎日とても気持ちの良いものでした。
そんな中、今回はプライベートでの来日なので、しっかり日本のお食事も頂くことができました。
今回それもとても大きな楽しみの1つでした☆
美味しいものを食べられない・・・
毎度、日本にせっかく行くのなら、お腹いっぱい、おいしい日本のものを食べてらっしゃい、とよく言われます。でも例年、コンサートツアーのための来日なので、毎日演奏に追われ、なかなかその日本のおいしいものをゆっくり食べる時間が、残念ながらいつもは無いのです…。
午前中は移動時間で、午後からバンドメンバーと顔合わせ、ミーティング、リハーサルとサウンドチェック。小一時間ほどの、お客さま入場の間の休憩を挟んで、軽くちょっと何かお腹に入れるチャンスがあるかないかで、コンサート本番となり、(私は歌も歌うので、本番直前には食べないことにしています、)コンサート終了後、夜10時過ぎには、大概どこのレストランも閉まった後…。
何とかが有名などこどこ!、というような場所へツアーで行ったとしても、ほぼお目にかかれずに帰ってきたり…コンサートの片付けが終わった頃に開いているのは、駅前の、お決まりのチェーンの居酒屋さんばかり、と言った感じでした(涙)
モダンな懐石料理
でも、今回はプライベートなので、ゆっくりと日本の食文化を味わうことができました☆
今回の訪日の目的は、ファミリービジネス(家族の用事)で、多くの人々と会うことになっています。お食事をしながらの会見も多く、いろいろなレストランへ行く機会がありました。
そこでまず感動したのは、和食にしても、シーフードや、焼き鳥にしても、おいしいものを少しずつ、見事な飾り付けで、時間をおいて何皿も出してくださるコースのお料理です。それぞれに、凝っているのです、お客様のニーズにちゃんと合わせるように。
え、そんなの普通でしょ、日本だったらどこでもそういうレストランがあるじゃない?と思ってらっしゃるあなた。世界は違います。
特にアメリカは、いやヨーロッパも含む欧米では、メインコースがドカンと大きくないと食べた気がしない、と言う西洋の人々がほとんど。例えばステーキにしても、ローストチキンにしても、食べ切れないでしょ!、って言う位の大きいのが、メインコースでどんと出てきます。
以前、居酒屋などでも、多くの種類をオーダーして、みんなで少しずつ取り分けて食べるのが好きな日本人、と言う話をしましたが、まさにそれで、その時その場にいた欧米人からは、「このレストラン(居酒屋)は、アペタイザー(前菜)だけで、メインコースはないの?」「なら、これから別のレストランに行くの?」と聞かれたのを、思い出します(笑)
私たち日本人は、季節感溢れるいろんな食材を、いろんな調理方法で、いろんな味付けで、ちょっとずつ、楽しみたいですよね。これは明らかに欧米人と違うな、と感じるところです。日本人の、繊細さが、ここまでの違いを生み出したのでしょう。
スシと言えばカリフォルニアロール
久しぶりに日本でお寿司を食べて、改めてアメリカとの違いを感じました。アメリカで寿司といえば、普通はスシロールと言って、カリフォルニア巻きなどのアメリカ風巻物のことです。
握りやチラシ寿司等は、まだまだアメリカでは浸透していません。食べているのは、主に日本人か、特に、通の少数のアメリカ人くらいです。
1度、アメリカ人の友人が寿司が大好きだ、と言うので一緒に寿司レストランへ行ったところ、彼のオーダーはカリフォルニアロール1本でした。でも彼は、真剣なのです。そんな彼の目の前で、握り寿司を食べて見せました。
生の魚の切り身の乗っかった小さなご飯の塊を、どんどん食べていく私を、彼は不思議そうに見ていました。普通のアメリカ人にとって、生の魚を食べると言うのはとても抵抗があることのようです。
なぜなら、魚介類は調理してから食べる、というのが彼らの常識だからです。多分私が、彼にとって初めての日本人の友人だったのでしょう。その店のアメリカ人のウェイトレスさんも、大きくて深い醤油皿に醤油をスープのようになみなみと注いでくれたし、まあ、この話はずいぶん以前ですけれど、食文化の違いを知るのは、外国へ行ってみると結構面白いですよ。
イタリアンも違う
そして、今回アメリカと日本で違うな、と思ったのがイタリアン。まずアメリカでイタリアンと言えば、ピザかスパゲティー。どーんと大きいホールピザか、山盛りのパスタが目に浮かびます。
ところが。日本のイタリアンレストランでは、細部に渡って、素材、料理方法、器、説明のタイミングや盛り付けが、何とも言えず素敵で驚きました。
この、少しずつ、珍しいものを時間を置いて出してくださると言うテクニックは、日本の古来の懐石料理の流れから来たものでしょうか。もう、素晴らしいったらない!
スイーツが完璧☆
そして今回特筆すべきは、デパートの地下街のスイーツの完璧さ☆
博物館かと思うほど広いフロア内に、あらゆるお菓子が和洋びっしり揃っていて、またそのパッケージや、スイーツそのもののデザインが、とてもとてもカラフルでアーティスティックで美しいこと。
ダイスキ・ニッポン
私は、これまでずいぶんといろんな国を訪れたことがありますが、どう考えても、食の文化では、日本が世界一だと思います。
日本は、本当に素晴らしい。うらやましい!と言えば、じゃあ帰ってくればいいのにって言われちゃいそうだけれど、それも1つのアイディアですが、これだけおいしいものが揃っている国に住んじゃうと、何か自分の中ではそんな贅沢はしちゃあいけない、みたいなところがあって(笑)。
たまに訪れるから、ありがたみが増す、っていう楽しみ方が私にはちょうど良いのかも。
それではまた来週
Kayo
次回予告
次回は、日本で乗ったタクシー運転手さんへのインタビューをお届けします。日本のドライバーさん達はほんとに礼儀正しく、制服を着て、自動ドアをシャキッと開けて、きちっと目的地まで送り届けてくださいました。ニューヨークのイエローキャブは、乗客はドアを自分で手動で開け閉めします。ドライバーさん達も、思いっきり、アロハとかヨレT(よれたTシャツ)とかの私服です。日本のタクシーは、ニューヨークのイエローキャブとは全く違う。次回はそんなお話をお届けしますね。
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。