前回で一旦終了していた、生まれて初めて日本に行ったアメリカ人の友人に、初めての日本の感想を聞いてみたシリーズ、まだいくつかお土産話が出てきましので、もうしばらくお付き合いください。
今回は日本でのショッピング、アメリカ人は日本で何を買ったのか、というお話。
まず、日本に住んでおられると、あまり気づかないかも知れませんが、日本のものの多くは、とにかくデザインに優れていると思います。特に大都会のデパートメントストア(百貨店)などで、コロナ後、またインバウンドの外国人で溢れているというのも、頷けます。
食品を始めとして、衣類、装飾品、そして文房具、家具に至るまで、あらゆるデザインのもので溢れていて、購買意欲をかき立ててくれますが、実際に買おうとすると、欲しいものを選ぶのに迷って、結構時間をとられてしまう、と言う方も多いのではないでしょうか。
カバン1つにしても、本当にピンからキリまで、オシャレで小さなハンドバックから、精密なカメラや、折りたたみ自転車、サーフボードなど特別な荷物を運べる、大きな旅行用鞄まで、日本では、あらゆるものが自分の予算や希望に応じて、手に入りますよね。
アメリカ人の観光客さん、今回の初めての日本で、自分用に、ちょいとカッコいい皮のショルダーバッグを購入したくて、まず最初にお店を探したようです。
3年以上という、長く続いたパンデミックのおかげで、アメリカでは、ほとんどの人びとが、買い物はAmazonに依存してしまうようになりました。以前はデパートに行って本物を吟味してから、同じようなものをアマゾンで探して、安めのものを買うと言うような、賢い買い物方法でした。
そんな人々も、コロナのせいで、人混みに出かけるのをためらうようになり、何か必要なものがあれば、即、もうアマゾンでいいや、と。このAmazon、プレミアムにさえ入っていれば送料は無料になるし、自動引き落としの上に、大概は2日か3日で届くので、確かに便利。
でもね、でもね、ですよね。届いてみると、色合いや材質がちょっと希望のものとは違ったり、実際に持ってみると重めだったり、なんだか自分には似合わなかったり(モデルさんには随分とちゃんと似合っているのに、笑)、随分とリターン(送り返す)の必要も多いですよね。
そんな中、待望の、3年間待ちに待ったコロナ明けでの日本旅行。日本には、素敵なものが有り過ぎると聞いていて、とっても楽しみにしていたそうです。
このバッグは、神戸の小さなお店で、見つけて、ものすごく気にいったそうです。このお店のオーナーは、イギリス人の貿易商だそうで、結局イギリスのものだったのですが、でもレザーは上質だし、デザインが気に入ったので、いいものが買えた、ということで、めでたしめでたし。
二つめのお買い物は、ミラーレスのカメラ
本当は、「一眼レフのちょっといいの」を買いたかったそうです。最初はそう言ってお店の人に出してもらっていたようですが、来年にでも、また日本に来てオプションの望遠レンズを買い足そうと思う、と言ったところ、この先買い足して行きたいなら、将来性があるミラーレスカメラの方が良いかも、と言うアドバイスをもらったそうです。
ミラーレスカメラと言えば、小型、軽量が売り。本当は、ずっしりとした大きめの一眼レフを買いたかったそうなんですが、(何故かと言うと、日本人に比べて手もずいぶん大きいので)でも、お店の人のオススメは、これから未来のあるミラーレス。とっても迷いましたが、一眼レフに未来がないのではしょうがない、とミラーレスを購入したそうです。
3番目のお買い物は、なんと包丁と研ぎ石。
なぜアメリカ人が包丁と研ぎ石だったのか。まずは、アメリカで、ヒット作を生み続ける新進気鋭の映画監督、クエンティン・タランティーノ。この監督の、キル・ビルという2003年映画はご覧になりましたか?この映画監督は日本びいきだそうで、彼の映画の中には、アメリカ人から見える日本が、(ずいぶんと面白みのある日本ですが、)出てきます。
復讐に燃えた主人公のユマ・サーマンが、日本に、幻の名刀を求めて日本刀を作りに行くシーンがあるんです。その名工役が、今は亡き往年のアクションスター、ソニー・チバ(千葉真一)さんでした。
頑固な日本人も名工ですから、外国人の見知らぬ女性に、そんなに簡単に名刀を作ってあげたりはしないのですが、最後には立派な名刀を手に入れ、アメリカへ戻ります。
この映画で、まず刀に興味を持つわけですね。
そして、NHKワールドと言う英語の放送局があって、これはアメリカでは有料ケーブルテレビとして見れるのですが、番組で、日本の工芸品などについて、アーティザン(名工)をよく紹介しています。
例えば、日本の各地に昔から伝わる竹細工とか、平安時代から伝わる自然の植物を使った染め物とか、切子などの工芸品とか、日本人の私でさえ、日本にいたときには知らなかったような素晴らしい工芸品の数々を取り上げて紹介。
それを作る人々のインタビューと共に、製造工程まで見せてくれるとても良い番組なのですが、その番組で、刀鍛治さんが、今は包丁を作っている、と言うエピソードがあったそうなんです。
その番組作りのNHKのスタッフさん達の番組作りのうまさもあったと思うのですが(笑)、それを見たアメリカ人の彼は、日本のこの名工たちが作ったであろうクッキングナイフ(包丁)を、「いつの日か日本に行ったら手に入れてやろう!」と目論んでいたようなのです。
ここで、日本の皆さまはご存知のように、日本では最近の包丁はステンレスは当たり前で、その上セラミックの包丁まで出ていますよね。なので、なかなか普通の包丁コーナーでは、鋼で作った、手作り感ある値段の高い包丁を置いているところがありません(笑)。
なのでプロ仕様の包丁屋さんを探さなくてはいけなくなりました。そこで、彼は、合羽橋と言う、キッチン用品なら何でも揃うと言われている東京の名所へ、出かけることに。
そして、後はお察しの通り、専門家の説明を受け、友人らのアドバイスもあり、お店いっぱいに置かれた何百本かの包丁の中から、なんとなく気にいった1本を選び、それに自分の名前までエングレイビング(彫金)してくれたそうで、自分の名前入りの包丁と研ぎ石をニコニコ片手に、アメリカへの帰宅の途についたと言うわけです。
そんな日本でもアメリカ人のお買い物のお話でした。
来週もお買い物の続きのお話をお届けしますね。
それではまた来週♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。