先日,中学生向けの英語教材の執筆をしていたときのこと。
「この日本語って日常で使う?」
というある単語に出会ったんです。
それは,私が現役で教壇に立っていた頃から思っていたものなんですが,
使う人っているのかなぁ。
その単語とは,“often”。
あなたはこの英単語,どのように日本語に訳しますか?
今日はちょっとお下品な表現が出てきますが,勉強と思って読んでくださいね。
―英語習得の鉄則は実践だけど…―
私がアメリカに住んでいた頃,日常生活の会話はもちろん英語。
日本人留学生もいるにはいたのですが,英語がうまくなりたい私はなるべく日本語には触れない生活を心がけていました。
日本語に触れる時と言えば,
「英語の意味がわからないとき」
に辞書を調べる時がほとんど。
だからなのか,たま〜に日本人の人と会話をするとき変な日本語になることがありました。
たとえば,
「最近,◯◯に凝ってるんだよね。なぜなら,先月テレビでやってて面白そうだったから。」
という感じ。
「なぜなら」って,ビジネスでのプレゼンなど比較的きちんとした感じの場面では使うかもしれませんが,ただ友人や家族と会話してる時には使わない気がするんです。
A:お父さーん,明日の朝,学校へ送ってって。
B:いいけど,どうしたの?
A:なぜなら,自転車がパンクしちゃってて。
みたいな感じ。
こういう「辞書みたいな言葉遣い」に自然となるときがよくあったんです。
思い起こせばそれって,きっと「言語学習」になってしまっていたからじゃないかな,って思うんです。
もちろん,言語学習が悪いわけではありません。
でも言葉って
「使ってナンボ」
だと思うのです。
だから
“because”=「なぜなら」
と,ただ言葉を暗記のように覚えていたから,そういう言葉遣いになったんじゃないかな,って自分では思っています。
やっぱり言語は
「覚えたら使う」
これが鉄則です。
―同じことが教科書でも!?―
さて,ここでやっと冒頭の “often”のお話です。
“often”とは,
“We often go out for lunch together.”
(私たちはよく一緒にランチに出かけます)
のように,
「よく,しょっちゅう,たびたび」
のような頻度を表す語ですよね。
・私たちはしょっちゅう一緒にランチに行きます。
・私たちはたびたび一緒にランチにいきます。
でもOKです。
でも,なぜか中学で学習する教科書には
“often”=「しばしば」
と書かれてるんです。
これ,確か私が中学生の頃も同じだったような記憶が…
問題集の訳などでも,
「私たちは,しばしば一緒に昼食をとります」
のように書かれているわけです。
しばしば…
A:久しぶり〜。最近ジムに行ってる?
B:うん,しばしば行ってるよ。
という会話,あまりしないような気がするのです。
教科書によっては,
「しばしば,よく,たびたび」
のように書かれているものもありますが,
「しばしば」
だけのものもあります。
「しばしば」なんて使う中学生ってあまりいないと思うのに,
どうして教科書は「しばしば」なんだろう。
中学生には,
「よく,たびたび」
「しょっちゅう」
の方が,すっと意味が入ってきて良いと思うんですよね…
―普段は使わない日本語訳―
面白いことに,なぜか外国語学習の世界ではこのような
「普段は使わない〔訳〕」
というのがあると思うんです。
「普段使わない訳」…それって洋画などを見ているとよくわかる気がします。
字幕でも吹き替えでもそうなのですが,
“Hi guys!”
この “Hi”って挨拶ですよね。
だいたい決まって
「やあ!」
と訳されているんです。
「やあ,みんな!」
あなたは普段,こんな表現使ったことありますか?
こんな感じで,なぜか日本語訳にすると普段使わない日本語が出てくるんですよね。
ここからはちょっとお下品な表現がありますが,勉強だと思ってお許しを!
例えば,物事がうまくいかない主人公が空き缶を蹴りながら,
“Sh◯t!”
と悔しそうに言うシーンってありがちじゃないですか。
(あ,◯には “i”が入ります)
これ,日本語では
「ク◯ッ!」(◯には〔ソ〕)
って感じですよね。
これは使うこともある表現かと思います(人によりますが^^;)
でも,映画ではよく
「チクショー!」とか
「畜生!」
と字幕に書かれているのを見ます。
もちろん意味はわかります。
でも,やっぱり普段の生活では使わないと思うんですよね。
それって,もしかすると私が上品だからなのかしら…(笑)←それはない。
―言葉の力!?―
( )は直訳です。
“Oh, Jesus!”
(ああ,キリスト様!)
“Bullsh◯t!”
(雄牛の糞=ク◯ッ!)
“Damn!”
(けなす,すごく)
これらも,場面によっては
「チクショー!」
と訳されているんですよね。
「ク◯ッ!」
くらいは言うこともあると思うのですが,
その訳じゃダメなのかなぁ。
でも,
「クソッたれ!」
というのもありますが,「たれ!」が付くと一気に使用頻度が下がってしまいますね。
あともう一つ,よく映画などに登場する表現があります。
それは,
「なんてこった!」。
予想外の出来事や,困った状況に直面した際によく出会うこの表現。
英語では,
“Oh, no!”
“I can’t believe it.”
“What the heck!”
などが使われますが,よく
「なんてこった!」や「ちくしょう!」
のように訳されていますよね。
“What the heck!” の “heck”とは,本来は
“What the hell!”
のように,“hell”(地獄)なのですが,
それではストレートで強すぎる。
そのため,もともと「すごい」という意味のある
“heck”
を使って柔らかく表現したもの。
いずれも普段の生活では使わないのに,多言語からの「訳」になると登場してくるんですよね。
“Hi!” 以外のこれらの表現って,ちょっと悪い言葉。
もしかすると,もしかするとですよ。
英語ではいろんな表現があるけれど,その日本語訳って限られている気がするんですよね。
もしかすると,日本語ってそういうネガティブな言葉って少ないのかな。
しかも,知ってはいるけれど普段の生活では使わないような言葉ばかり。
日本語って,そういう言語なのかもしれないと私は思うのです。
他の言語と比べて,ネガティブな感情を表す間投詞が少ないのかも,と。
だから,いろいろな悪い意味の英語表現にも,「チクショー!」や「クソッ!」のようなレパートリーの少ない表現になってしまうのかもしれません。
「英語は覚えたら使う」が私のモットーであり,言語学習の鉄則。
ですが,今日ご紹介した多くはあまり使わないほうがいい表現です。
でも知識として知っておく必要はあると考えています。
私が英語の専門学生だったころ,こんな授業がありました。
それは「悪い言葉」の授業。
そのとき,ネイティブの先生にこう言われたのです。
「日本人はわからない時,笑ってやり過ごすことがある。それでは危険。悪い言葉は使わなくてもいい。でも知っておくことは大切。いざ,そういう場面になった際に「???」となってしまうと対応できないから。だから知っておくこと!」と。
使う必要はないので,少しでも頭の片隅にでも覚えておいてくださいね。
でもやっぱり自分から使う言葉はポジティブでありたいもの。
ほら,よく言霊って言うじゃないですか。
「言葉には特別な力があり,発した言葉がそのまま結果となって自分に返ってくる」って。
それを考えると,やっぱりポジティブな言葉を使っていきたいですよね。
ちなみに英語で言霊は, “Power Words” と言いますよ。
そのまま「言葉の力」ですが,
「言霊」
の方がなんだかさらに秘めた力があるって感じがしますね。
それでは,また来週〜♪
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。