おはようございます!
木曜の朝のCozyです。
私は最近,「英語で話す力」をAIで瞬時に判定できるテストを中心に制作しています。
英検やTOEICなど既存のテストはもちろんのこと,飲食業や医療,宿泊業などの企業向けのテストや面接試験など,様々な業界にも完全オリジナルで対応できるスグレモノ。
実際の人間か?と間違えるほどのアバターが テストを進行していくのですが,
その中に,
“Press START to begin the test.”
(スタートを押してテストを始めてください)
という文言があります。
“press”って「押す」,ですよね。
でももう一つ,“push”も「押す」です。
あら,似たような感じです。
しかし,実はちょっとだけ違うんです。
あなたはこの違い,わかりますか。
―英語と日本語の教材,両方作ると敏感になる―
あなたは,
「自分の英語がどのくらい通じるのかなぁ」
「でも,実際に人と話すチャンスはないし,恥ずかしいし」
なんて思っていませんか。
学校や塾などはもちろんのこと,最近は多くの企業や組織から
「英語や日本語の話す力をはかりたいけど,相手が人間だと評価のバラツキもあるし,
費用もかかる」
「完全にオリジナルで,自分の組織にマッチしたオリジナルテストを作りたい」
という要望に対応できるテストを制作しているのですが,英語はもちろん,外国人のための日本語能力テストも制作しています。
なんだか宣伝のようになってしまいましたが,そうではないんです。
(あ,お問い合わせはウェルカムです(笑))
なぜ,このようなお話をしたかと言うと,
英語と日本語,両方のテストを作っていると,
「言葉の違い」
についてすっごく敏感になってしまうんですよね。
それが今回お話ししたい
“press” と “push”なんです。
最初にお伝えしたように,私が制作しているスピーキングテストは最初にアバターが
“Press Start to begin the test.”
(テストを始めるにはスタートを押してください)
と話しかけるのです。
もちろんこの表現はオリジナルで変更可能なので,別の表現に自由に変えることができるのですが,私は敢えてこの表現を使っています。
ある時,外国人向けの日本語の就職面接テストを作成しているときに思ったんです。
「スタートを押してください」…
「なんで自分は英語では “Press”にしたんだろう。 “Push”ではなくて…。」と。
自分が作った文章にもかかわらず,そう疑問が湧いてきたのです。
でも,ここではやっぱり“push”ではなく“press”なんですよね。
その違いを,できるだけわかりやすく説明させていただきますね。
― “push”と“press”のイメージ―
まず “push”と “press”の基本的なイメージを掴んでみましょう。
“push”と “press”は,言わずとも
何かを「押す」
という意味です。
両方に使える場合も多いのですが,
ちょーっとだけニュアンスが異なることもあるんです。
つい先日,ちょっと足を伸ばして郊外にあるステーキ屋さんへランチに行ったんです。
そこはちょっと素敵なサラダバーのあるお店。
入口にドアには
“PUSH”
と書いてあり,押してドアをあける感じ。
そして8人は座れるであろうテーブル席に2人で座ると,
そこには,呼び出しボタンが置いてあり
“PRESS”
と書いてありました。
まさにこのイメージなんです。
基本的に “push”とは「押す」という意味として,いろいろな場所で使うことができるのですが,イメージで言えば,
「押して移動させる」
感じなのです。
この場合,
「押してドアを開ける」
ことで,ドアが開く,つまり扉が移動していますよね。
また,
買い物に行ってショッピングカートを押す場合も “push”を使います。
“He pushed a shopping cart full of groceries.”
(彼は食料品でいっぱいのカートを押した)
ショッピングカートも押して動きます。
このように「押して動く」イメージが “push”なのです。
― “press”のイメージ―
一方, “press”はどのようなイメージなのでしょうか。
同じ「押す」と言っても “press”の場合は
「圧をかける」感じです。
ほら,何らかの圧力がかかって緊張することを
“pressure”(プレッシャー)
って言いますよね。
“press”という言葉が入っています。
また,アイロンがけなど「圧をかけてしわを伸ばす」場合も
“press”(プレス)と言いますし,
「オレンジの(圧をかけて)果汁を絞る」ことも
“press oranges”
と言います。
“I press oranges to make fresh juice every morning.”
(私は毎朝,オレンジを絞ってフレッシュジュースを作ります)
のように使います。
ですので,
「押して動く」が “push”のイメージであれば,
「押して圧をかける(動かない)のが“press”なのですね。
先ほどご紹介したステーキ屋さんのテーブル上の呼び出しボタン。
そこには “PRESS” と書いてありました。
これは「ドア」とは違って,その場所から動かずに圧をかけて押すからなのですね。
これが “push”と “press”の「基本的な」イメージなのです。
―両方使えることもある―
とは言え,ボタンを押す場合に
“push”と書いてあることもよくあるんです。
私が行ったステーキ屋さんの呼び出しボタンには “PRESS”と書いてありましたが,
ファミレスなどに置かれている多くのボタンには
“Push”
と書いてあることがよくあります。
これはどういうことなのでしょうか。
実は,「ボタンを押す」
という場合は,
“Push the button.”
“Press the button.”
のように両方使うことができます。
先ほどの説明で考えると,
“Push the button”の場合は,ボタンを押すとちょっとだけ押す部分が凹んで動きますよね。
何も動かないとちょっと不安になって,さらに強く押してみたり(笑)
この「動く部分」に注目していると考えられます。
逆に
“Press the button” の場合は,
「圧をかけて押す」
ということにフォーカスを置いていると考えられるのです。
このパターンは他にも,
「キーボードのキーを押す」
“Push a key.”
“Press a key.”
「スイッチを押す」
“Push the switch.”
“Press the switch.”
などにも使うことができます。
でも,この共通する2つにも違いがあるんです。
その違いとは,
“push” はわりとカジュアルで,幅広く使われます。
また注意喚起や緊急時などの場合は, “push” を使ったほうが勢いがある感じがします。
実際,押しボタン式信号などにも
のように書かれていることが多いです。
反対に “press”は,ちょっと丁寧なイメージ。
電話や光熱費の料金やWi-Fiなどの問い合わせを電話ですると,音声ガイダンスで
“For billing or payment questions, press 1.”
(請求または支払いに関するご質問は 1 を押してください)
“For technical support, press 2.”
(技術的なサポートをご希望の場合は2を押してください)
のようなガイダンスを聞くことがあります。
このように,丁寧に言う必要のある場合って “press”が使われているイメージです。
だから私の制作しているスピーキングテストも
“Press START to begin the test.”
(テストを始めるにはスタートを押してください)
という感じで “Press” を使ってたんですね。
まとめると,
“push”
・押して動くイメージ
・幅広く使われており,カジュアルめ
“press”
・圧をかけて押すイメージ
・ちょっと丁寧
こんな感じです。
“push”と “press”のイメージが掴めましたでしょうか。
もし今度,”push”と “press”の文字に出会ったら,どういう意図で使われているのか考えて見て下さいね。
きっとお店のドアなど,意識してみてみると多くあると思います。
ということで,私はまた業界別のテスト作りに励みまーす!
それでは
See you next week〜♬
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。