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「クモの糸」は元々欧州民話?

World Lifeな生活
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先日小説家 Italo Calvino / イタロ・カルビーノが収集したイタリア民話集にある”Jesus and St Peter in Sicily”を読んでいたら「えっ!」と。

次のような内容。(原文はイタリア語)

聖ペテロ(キリストの弟子)の母親は、ドケチで他人に施しを一切しない。その為死後地獄に送られる。

息子ペテロやキリストに泣きつかれ、神はしぶしぶ彼女の善行を探す。すると彼女が生涯一度、剝いたネギの皮を貧者に与えたことを思い出す。

地獄の亡者達に囲まれた彼女の眼前に、どこからともなくネギ皮がひらひら落ちてくる。
彼女が慌ててつかまりぶら下がると、ネギ皮ごと宙に浮かぶが…


…when all the poor souls…, seeing her rise,
(その時地獄にいる哀れな者達が彼女が浮き上がるのを見て,
latched on to her skirts…
(皆彼女のスカートにつかまった).

Then that selfish woman screamed,
(するとこの利己的な女はキャーッと),

“No! …Get off! .,..Just me!
(ダメ、降りなさい、私だけよ!)
You ought to have had a saint for a son, as I did!”
(私みたいに息子が聖人じゃないとダメ!)
She kicked and shook them from her
(彼女は他の者達を蹴り振りほどこうと),
jerking about so much to get free
(あまりに揺さぶった為),
that the leek leaf broke in two
(ネギの皮は二つに裂け)
and St. Peter’s mamma went plummeting to the bottom of Hell
(聖ペテロの母は地獄の底へ墜落していった).

私、芥川のクモの糸を思い出したんです。他を変更すればそっくり。

神 → お釈迦様
聖ペテロの母 → 極悪人のカンダタ
ネギの皮 → くもの糸

私頭が???で一杯に。なぜなら中学の教科書にあったクモの糸、似た話がイタリア民話にあるなんて変。芥川が書いたと信じてたからです。

上で引用したのは、イタロ・カルビーノが1956年出版誌からの依頼で、まとめた200編の民話の一つ。イタリア版グリム童話集みたいなのかも。

実はこの民話集には、クモの糸だけではなく、シンデレラとか、他の物語を思わせるモノもあちらこちらにあったんです。

今はクモの糸だけに話を絞ると、作者本人の注では「聖ペテロの吝嗇(りんしょく)な母」は広くヨーロッパで昔から有名。最古の記録はドイツの16世紀の詩だそうです。

「クモの糸」は、どうやら芥川の100%創作ではなかったみたいだ…と驚いて、今度は芥川の方から調べてみました。本当にクモの糸を辿る感じですねw。

するとやっぱり、「クモの糸」のネタが判明したんです。

「クモの糸」の直接のネタは(定説は)「因果の小車(おぐるま)」。

これは米国の宗教学者、Paul Carus / ポール・ケアルスが100年位前に書いたもの。念の為読んでみると、クモの糸とそっくりでした。

でもクモの糸に似た話は、もっともっと昔からあるわけですよね。繰り返しになりますが、上であなたに紹介したような話が、イタリアとかヨーロッパ中で伝えられてきたのですから。
私の推測ですが「クモの糸」の元を辿れば行き着く先は結局こういう民話かもしれません。

民話が出所というのは、クモの糸だけではなさそうです。上で少し触れましたが、私が読んだイタリアの民話集には、クモの糸以外にも似た話がありそうなんです。

あなたが子供時代に聞いたお話しの多くは、突然現代に生まれたのではなく、もっと古い似た話、さらにもっと古い話…みたいに跡を辿れるのかもしれませんね。また面白い発見があればお知らせします。

今回イタロカルビーノの著作を読み、世界の文化的繋がりを垣間見た気がしました。

洋書は面白いです。あなたも英語から初め外国語の読書で直接他の文化に触れられるようになると良いですね。

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<英語版>
日本語で内容を理解した上で今度は英語で理解してみる☆
↓ ↓ ↓
https://worldlife.jp/archives/18089

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