「アメリカに住んで、当時不思議だと思ったこと」というお題のリクエストをいただきました。
NYに移り住んで以降、もうそれはそれは、いろんなことがありましたし、いろんな人にも会いました。そんな中、今回はまず、今でも私がこれって良いかも!と思っていることをポイントに、お伝えしますね。
とにかくおおらかな、アメリカ
まず感じたのは、アメリカ大陸はとにかく広くて、おおらかで、オプティシズム(プラス思考)の考え方をする人が、とっても多いと言うこと。
アメリカ合衆国のそもそもの成り立ちから考えてみると、それも当然かなと思います。
だって、ヨーロッパから新天地を求め、長い船旅を持ってして、自分たちの理想のアメリカンドリームを夢見て渡ってきた人たちの子孫なわけですから。
さてその理由、単位の違い
そんなアメリカで、スケールの大きさを感じたことが一つ。それは、靴や服のサイズが本当に大きい。ですが、単にサイズが大きいだけではありません。
例えば日本の靴のサイズは、0.5cmごとですよね。25cmが合わなければ、25.5cmの靴を見つけてもらう。ですがここアメリカでは、単位がインチ。
1インチは、約3cmなので、1サイズ違えば3cmも違う靴を履くことに。0.5インチごとに用意されていることもありますが、それでも1.5cmも違います。
アメリカでは男性の平均サイズが約30cm、女性でも平均が25cmでサイズの幅もかなり、それだけ数多くの種類が必要になる為、0.5cm単位で用意したら、それだけで倉庫が大変なことになるでしょう。
日本人の0.5cm感覚からすると3倍の違いなんですが、アメリカでは、それくらいの差は許容範囲で、ぴったりな靴がない!なんてことは聞いたことがありません。
そこはあまり気にしていないようです。
これだけでも、この人々のおおらかさが分かってもらえるのではないでしょうか。
美味しいものをちょっとずつ食べたい日本人と、どかっと食べたいアメリカ人
アメリカでもう一つスケールの大きさを感じたことがあります。それはやっぱり食事の量。
特に、お惣菜売り場なんかにいくととても実感します。日本だと100gあたりでいくらって記載されてますが、アメリカでは1パウンド。つまり約500グラム。
お惣菜売り場でも、1パウンドが基本です。日本の100グラム基本とは、5倍の違い。もちろんクオーターパウンド(4分の1、約125グラム)で購入することもできますが、クオーターパウンドでいちいち買う人は、見たことがありません。
こちらに来てすぐ、売り場の方が少し面倒そうにされてたんです。なんでかなーと不思議だったのですが、今考えると日本だと100g単位で売っているものを、25gに分けるようなものですから、色々ちまちま買いやがってめんどくせーな、と思われていたのだと思います(笑) 。
量は多いですが、お惣菜売り場で買うハムや紫キャベツのサラダなど、干しぶどうが入っていてマヨネーズ味で、結構おいしいです、笑)
地下鉄も、バスも太っ腹
それから、大雑把と言うのはアレですが、地下鉄乗り放題のこの感じ。初乗り料金2ドル75セント(約300円)で、MTAという名前のニューヨーク市の地下鉄は、なんと乗り放題。
乗り放題、と言う言い方はしていませんが、すべて統一料金で、例えば、ヤンキースタジアムよりもっと北の、ブロンクスの端からずっとマンハッタン島を南へ降りて、そのままブルックリンへ、ずーっと南のコニーアイランドビーチまで、約2時間弱の旅も、同じ初乗り料金で行けちゃうんです。
コニーアイランドは、一昔前はニューヨーカーの憩いのビーチリゾート。遊園地があったり、水族館があったり、そして長いボードウォークが。
マンハッタンからも1時間足らずなので、今でも地元ニューヨーカーには愛されているビーチです。太っ腹だなぁ!と最初思ったものです。
もちろん路線バスも全て同一料金。観光でも、安く観光したい人には路線バスを勧めちゃいます。大概終点まで行ったらぐるっと回って戻ってきますから、ミッドタウンの自分のホテルの前から約300円で、景色を見ながらのんびり、夏だったらしっかりクーラーも入って、マンハッタン一周ができちゃいます(笑)。
さて、まとめ
この、おおらかな人間を作っているアメリカが、ダイナミックなジャズの演奏家たちを生むのだなぁと、来た当時は感激しました。
もちろん歴史が違う、血が違う、DNAが違う、食べ物が違う、環境が違う、違うものだらけです。けれど少しでも彼らの演奏に近づきたい、そう思って夢を膨らませていた当時の私は、まずアメリカの大きさに、すべての大きさに、驚いたのでした。あまり周りの目を気にせず、おおらかに、上を向いて、ポジティブに。今では、私の毎日の生き方の指標です。
そしてこの考え方は、私の人生を明るくしてくれました。朱に交われば赤くなる、どんなにこころが折れてくじけそうな時でも、周りが後押ししてくれるのです。これは、この国の人たちに、大袈裟でなく、感謝です。
わたくしごとですが
ニューヨークは、ロックダウンに入って1月15日で10ヶ月。私はもともと引きこもりがちだったのか、ちょうどいいチャンスとばかり、いろいろなことを勉強しています。ネットがあるので、まるで図書館が自分の部屋にあるようなもの。
ものを読んだり、聞いたり、見たり、今まで時間がないない、と脇に追いやっていたものを端から取り出して、それを会得しようとしています。
神様がくれた、特別な時間。この先どうなるかは分かりませんが、今はとにかくこの大切な時間を有効に使い、ポジティブに前を向いて毎日を過ごし中。この状況は、世界中、ほとんどきっとどこも一緒。みんなで、一緒に頑張りましょう。
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。