あなたには,苦手な言葉はありますか?
私はあります。
それは,
「〜すべき」という言葉。
今は,昔と比べるとSNSやネットニュースのコメント欄など
自分の意見を発信する機会が多くあります。
そのような意見の中でよく使われるのが,
「〜すべき」 という表現。
なんだか,とっても投げやりかつ意見を押し付けている感が満載で
ちょっと苦手な言葉なんですよね。
そういえば,「〜すべき」という英語,
みなさんはどんな言葉を思い浮かべますか?
―「すべき」と「した方がよい」―
「〜すべき」= “should”という単語が思いついたのではないでしょうか。
実際,中学校で使用する主要検定教科書6種では,すべての教科書で
“should” 「〜するべきである」と掲載されています。
例えば,
“You should go see the movie!”
と人から言われたら,
「あなたはその映画を見に行くべきだ!」
のように,
(なんでそんなにキツく言われなくちゃならないの?)
と内心,ムッとする日本人もいるかもしれません。
日本の英語教育では,
“should”=「〜すべき」のように学習しますが,もう一つ同じような意味合いとして
“had better”
も学習します。
でも,その日本語訳は
「〜した方がよい」。
だから,「その映画を見に行った方がいいよ。」と言いたいときには,
“You had better go see the movie!”
のように訳されます。
でも,それ本当は違うんです。
― “had better”には警告が含まれている?―
冒頭で私が,「〜すべき」という言葉は,語気が強くて押し付け感があるので苦手だとお話しました。
そのような印象を持ってしまう「すべき」という表現。
何かを英語で伝えたい時には,
「ちょっと強い感じがするから, “should”ではなく “had better”にしたほうがいいよね。」
そう思う人も結構多くいらっしゃると思います。
ここでちょっと妄想タイム!
アメリカから大学生が短期留学して来ています。
滞在先はあなたの家。
あなたはホストファミリーとして,その学生をむかえています。
日本語がまだあまりわからないその学生に,
「あの映画,とても良かったから見に行った方がいいよ!」
と言おうとして,
“You had better go see the movie!”
と言うと,相手は驚いたような顔で
“Oh…, OK.” (あ…,わかりました。)
と,怪訝な感じでの返答。
それはなぜでしょう?(笑)
答えは,
“had better”は, “should”よりも強いから。
そうなんです。
“had better”は,「〜した方がいいよ」という柔らかい表現というよりも,
「〜した方がいい,じゃないと悪い結果になるよ」という警告的な意味合いが込められているのです。
例えば,
“You had better quit smoking, or you’ll be sick.” (タバコはやめたほうがいい,じゃないと病気になるよ。)
という感じです。
対して“should”には様々な意味がありますが, “had better”と比較すると日本語訳の「〜すべき」という強いイメージではなく,カジュアルに
「〜したほうがいいよ」「〜したら?」
のような感じです。
“The movie I saw last night was great. You should see it.”
(昨日見た映画は素晴らしかったよ。あなたも見たほうがいいよ。)
のように,「〜するといいよ」という軽いアドバイス的に使うことができるのです。
その映画を見ないと,何が起こるかわからないぞ!的に言われたらいやですよね…(^_^;)
―なぜ “had better”は,「した方がいい」なの?―
“had better”は,「警告的」な使い方をするのに,なぜ日本語訳では「〜した方がよい」と,優しい感じで訳されているのでしょうか。
これはあくまでも私の憶測です。
でも結構,そのとおりじゃないかな,と思ってます。(笑)
日本の英語教育は,なんとなく数学の公式のように型にはめ気味のところがあるように感じます。
もちろん,それで学習できる文法もたくさんあります。
そう考えると,この “had better”には, “better”という単語が含まれています。
ご存知の通り, “better”は, “good”の比較級。
比較級は,「より〜だ」と,教科書では訳されます。
“Takashi can run faster than his brother.” (タカシは彼の弟(兄)よりも速く走ることができます。)
のように,比較級は「比較する対象があることが前提」。
“better”が使われている “had better”も比較と考えてしまい,
「△△するよりも,○○した方がよい」
と訳されたのではないかと思っています。
でも,本当の意味はその中に「警告」が含まれている感じなんですけどね。
―知識をアップデートさせよう!―
「〜すべき」= “should” と機械的に訳してしまいがち。
ここで多くの「大人たち」としたのは理由があります。
現在,中学校で使用されている6つの検定教科書では,そのうち4つは
“should”=(〜すべきである,〜した方がよい)の両方の意味が記載されており,
“had better” においては記載されていないか,または記載されていても
“You had better ~.” =「〜しなさい。」
のように,きつい命令となっています。
このように,日本の学校英語も少しずつ変わってきているのですね。
私たちも,これまで習得してきた知識をアップデートが必要なのかもしれません。
そう,アップデートさせた方がよい,のです。
いや,アップデートさせるべき!!なのかもしれませんよ(笑)
あ〜,「すべき」ってホントいや。
それでは,また来週〜♫
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。