仕事関係では,英語でメールをすることがとても多い私。
その多くに共通するのが,
「メール回数が増えるにつれ,表現が変わってくる」
ということ。
それは一体どういうことなのでしょうか。
どんなことか,ちょっとだけ想像してから次を読んでくださいね。
―不自然さの大切さー
最近,仕事で日本語の教材をいくつか見ていたんです。
その時,
「やっぱり語学教材ってこうなるよな」
と思ったんですね。
たとえば,
A:田中さん,あなたは今何をしていますか?
B:私は今,お昼ごはんを食べています。
この対話を見て,何か感じましたでしょうか。
特に間違いのない丁寧な会話です。
でも,何かぎこちなさというか違和感を感じませんか。
では次に,意識して日本語ネイティブの視点から見てみましょう。
私の場合は,
A:田中さん,今何してます?
B:今,お昼を食べていますよ。
のようになるかもしれません。(人によって違うと思いますが…)
こう考えると,最初の対話文はやっぱり固いですよね。
このようなことから,日本語の教科書の文章を
「不自然」
という印象を持つ方も多いのです。
言語って,その時のシチュエーションや相手との関係によって使い方を変えますよね。
最初の対話だと,上司,または立場が上の人が電話をかけてきたような雰囲気を感じます。
さらに,日本語は主語を省くことが多い言語です。
「あなたは今何をしていますか」なんて言われたら,なぜだか怒られているような気持ちになってしまうのは私だけではないと思います。笑
では,2番めの対話をみてみましょう。
これは全くの知らない人同士ではなく,でもすごく親しいわけでもない,職場の同僚くらいの関係性が見えてくるような気がしませんか?
なぜそのように感じるのか。
これって,日本語を第一言語として話したり日本語が達者な人だったりは,様々な
「日本語の使い方がわかっている」からそう感じるのだと私は思うのです。
だから最初の会話は「不自然」と思ってしまうんですよね。
まだ日本語の使い分けがよくわからない人が,「2番めの対話は不自然だ」という情報だけを得て,そのような表現ばかり身についてしまうとどうでしょうか。
使うシチュエーションによっては,それもまた「不自然」になりますよね。
これ,英語でも全く同じことがあるのです。
よく,英語の表現などを紹介する動画やサイトでは,
「教科書英語」
といって,「ネイティブはそう言わない」「使わない」と言われているものがあります。
確かにそうなんです。間違っていないし,勉強になるんです。
例えば,
A: Hello, how are you?
B: I am fine, thank you. And you?
これも,「教科書英語」とよく言われる挨拶です。
ネイティブは,
A: Hi, how’s it going?
B: Good, thanks. You?
A: Not bad.
のように言うほうが自然,と言われることがあります。
たしかにそう!でもこれもシチュエーション次第。
友だち同士ではいいかもしれませんが,目上の人や就職の面接試験ではあまり好ましいとは言えない気がします。
「ネイティブはこう言わない」「ネイティブならこう言う」と言われる表現の数々を学ぶことはとても大切。
だって,実際によく使われている言葉だから。
でも,私たちノンネイティブが,その情報だけで「そうなんだ!」と,シチュエーションや相手との関係性を考えずに “Hey, how’s it going?”なんて言うとどうでしょう。
相手は怪訝な顔をするかもしれません。
使う際にはシチュエーションや相手との関係性を考慮した上で使うように心がけましょうね。
―メールで使えるカジュアル表現―
ということでとても前置きが長くなってしまったのですが,仕事でメールをしていると,最初は,
Dear Mr. Oda,
My name is Tom Cruise.
(私の名前はトム・クルーズです)
I’m so excited to collaborate with you on this project.
(あなたと一緒にこのプロジェクトができることにとてもワクワクしています)
のような文章だったのが,
Hi, Cozy!
のようにだんだんとカジュアルになっていくんですね。
最初はとても丁寧な場合がほとんど。
お互いやりとりをしていくうちに,関係性ができて少しずつカジュアルになっていくのかもしれません。
では最後に,「カジュアルだけどビジネスでも使える,ちょっとネイティブっぽい表現」をいくつかご紹介しますね。
カジュアルさが入っているということは忘れないでくださいね。
◯“Thanks in advance.”
相手に何かをお願いしたときなど,「前もってありがとう」の意味で使いますが, “Thanks.”自体がくだけた表現なので,丁寧に言いたい場合は,
“I appreciate your help in advance.”
(ご協力いただき,あらかじめ感謝申し上げます)
のように書くと良いですよ。
◯“Many thanks.”
これもイメージしやすいかと思います。文字通り「たくさんありがとう」です。同僚やいろいろな国にいるプロジェクトメンバーとやりとりするときに,私もこれはよく使います。すごく丁寧に言う場合は,“Thank you very much.” がシンプルでよいかもしれません。
◯“No worries.”
Bobby McFerrinの “Don’t worry, be happy”♫という曲がありましたが,“worry”は「心配する」という意味。だからこの曲は,「心配しないで,ハッピーになろう」というタイトルです。そして,この “No worries.”も「心配しないで」という意味で使われています。相手が,何か心配していたり謝ってきたりしたら “No worries.”を使ってみてはいかがでしょう?
◯“Take your time.”
これは「時間をかけても(いいよ)」=「ゆっくりで大丈夫」という意味で使われることば。上の “No worries.” と一緒に “No worries. Take your time.”とすれば,(心配しないで。ゆっくりでいいよ。)のように使うことができます。丁寧に言う場合は,
“Please take your time.”とすればOK!
“Take all the time you need.”
(必要なだけ時間をお使いください)
もさらに丁寧な表現です。
◯“No rush.”
「ラッシュアワー」という言葉があるように “rush”には「急ぐ」という意味があります。 “No rush.”とすることで「急がなくてもいいよ」という意味になります。 上の “Take your time.”とニュアンスは似ていますね。なので,丁寧に言いたい場合は, “Please take your time.”を使うことができますよ。
これらはビジネスメールでも使うことができますが,できれば,相手との関係性やシチュエーションを考慮して使ってくださいね。
ということで,また来週〜♪
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。