バブルのころの六本木は,毎夜,華やかな雰囲気に包まれていました。
今回は,私が,六本木にあった防衛庁(当時)に勤務していた頃の英語武者修行のお話第2弾です。
六本木界隈から渋谷方向に下り,西麻布の交差点あたりを左に入ると,観光客の雑踏から一線を引いた大人の雰囲気のバーやレストランが隠れ家のように存在している。
西麻布の交差点を挟み,イタリアレストランの「キャンティ」,向かい側には「赤い靴」,その前には,行列のできるアイスクリーム店「Hobson’s」があった。
行きつけのバー「射手座」で、常連客とジャズの生演奏を楽しみながら話をしていると、カウンターの奥手から、英語と日本語のチャンポンで,怒鳴り声が聞こえた。
「だから、ニート・プリーズって言ったでしょ?」
<ニートって何?>
ぎょっとして、声の方向を見ると、バーカウンターで、ジーンズにTシャツの白人男性が、バーテンダーに大声で怒鳴っている。その横には,ボディコン(body consciousの略。肉体を意識するように、ぴったりとフィットする服装)の日本人女性。
この店のバーテンダーは、物腰が柔らかく、会話のセンスもいいので客には人気がある。
「だから、ニートっていったでしょ?」
と、白人男性はバーカウンターに置かれた、ウイスキーのオンザロックを指さしている。
バーカウンター内のバーテンダー氏は無言で話を聞いている。
「氷はいらないでしょ!ニートだから!」と外国人の男性。オーダーのクレームらしい。
早速、六本木で飲むときの必携アイテム「小型英和電子辞書」を取り出し、「ニート」を引いてみる。
辞書を検索してもなかなか見当たらない。ニートってなんだ?
near,,,,
nearly,,,,
neat あった!
【neat】
1.きちんとした、こぎれいな、きれい好きな
2.適切な、手際のいい、巧みな
3.すてきな、すばらしい、すごい
クレームをつけている白人は,バーカウンターに置かれたバーボンのオンザロックが、「こぎれいだとか、すてきだ!」とかほめている雰囲気じゃないし、何だろう?とさらに電子辞書の先に目をやると、、、、
4.液体、特に酒が、水や氷などで割らない、薄めないこと。「米語:straight」
「おお、これだ!」,「ニート(neat)」は、お酒のストレートのことだったのだ。
アメリカではストレート(straight)ということが多く、イギリスではニート(neat)というらしい。
興奮した外国人は、英語と日本語のちゃんぽんで「“Neat, please!”と言ったでしょ?」と続けている。
私は、カウンターのバーテンダー氏に聞こえるように、少しばかり声を張り,
「ニートってストレートのことかよ!」とつぶやく。
バーテンダー氏がこちらに視線を流す。口元に微笑みが見える。
次の瞬間、磨かれたショットグラスに、バーボンが「なみなみと」注がれ、クレームの白人男性の前に、恭(うやうや)しく差し出された。
「お店のサービスです」とバーテンダー。
白人男性は、「ニート・プリーズといったでしょ?」と再びバーテンダーにつぶやき、席についた。
どうやらその場は収まったようだが、白人男性の行為には、疑問が残った。
イギリス人のふりをした、アメリカ人がバーボンを一杯余分にゲットしたのだと推測したからだ。
なぜなら、イギリス人が「ニート」で頼むのであれば、バーボンじゃなく、スコッチ・ウイスキーだろう、と(笑)
細かいことを言えば,バーテンダーは最初に出したオンザロックはカウンターから引いていない。
新たに提供されたバーボンは,ショットグラスになみなみと注がれている。ダブルサイズだ。
そんなクレームをつけて、納得しているのだろうか?
Cozyさんの記事:「【幸せ】じゃないHappy 」にもあった,
“Are you happy with it ?”
「それで納得できてる?」
である。
<ニートの記事を投稿してみた>
実は,私Swatchは,防衛省関係の機関紙である「防衛ホーム新聞社」の英語コラムも書いています。
ちょうど私が六本木勤務していたころに始まりました。
1992年の3月1日号から,現在も連載が続いています。このコラムは、以前タモリのTV番組「トレビアの泉」にも取り上げられ,放映されました。
今回の記事を書くにあたって,その頃のことを思い出しました。早速,当時の原稿を探してみると,ありました。新聞なので良い具合にセピア色に変色していました。文章を読んでいくと,当時の思い出が,走馬灯のように頭の中を駆け巡っています。
最初の部分を引用してみます。
(以下,防衛ホーム新聞英語コーナーの引用)
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Hi!皆さん。How are you doing?ゴールデンウイークも終わりました。楽しい思い出がたくさんできましたか。心身ともにリフレッシュされたことと思います。業務に新たな意欲が湧いてきますね。
最近,このコーナーへ皆さんからのご意見が多くなりました,ありがとうございます,中でも,どこでネタを仕入れてくるのかという質問が多くあります。
「ネタ」の入手は,3通りの方法があります。
第1に,小説,映画,辞書などから引張てくる
第2に,在日米陸軍の仲間に「今,流行っている言葉や表現はないか」とインタビューする
第3に,六本木界隈の外人バー等で収集する
今回のNEATは六本木のバーで収集したものです。
私の隣に日本人女性と米国人のカップルが座りオーダーをする際に付け加えた言葉です。「ニートでお願いします」。彼に出されたものは,on the rocks 。次の瞬間,彼は劣化のごとく怒りバーテンダーに作り直しを命じたのです。(引用おわり)
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懐かしく思います。私Swatchが40歳代の頃に書いた記事でした。
<考えてみれば楽しい英語の武者修行>
ネタをどうやって入手するかについて,詳しく書いてます。Swatchの貴重な自分史。平成5年ごろですから、時代を感じます。ネタを、小説,映画,辞書などから探しているんです。
今なら,YouTubeで英会話のネタは探せそうですね。映画も,見放題のサブスクもあります。当時は,英会話は,教育テレビかNHKラジオ,映画は映画館に足を運ばないとなかなか見られませんでした。
英語の辞書からネタ探しなんて,今はそんな面倒なことはしません。
今はスマホに話しかけるだけで何とかなりそうですね。
そういう時代だから,自分でネタを見つけるというのは,楽しみがありました。英語の辞書を読んでいくと英語の歴史が分かったり,英語圏の文化が理解できたり,ワクワクする時間でした。
映画館で映画を見るのは,本当に真剣でした。入れ替え制のない映画館もありましたので,何回も同じ映画を見ることができました。一日中、映画三昧です。嘘のような本当の話。
米陸軍の軍人に流行り言葉をインタビューするというのも,面白かったです。職務で米陸軍基地に月に一度、連絡会議通訳官として行く機会があり,その昼食時などに話題にしていたと思います。
仕事で通訳として英語を使い,暇なときに英語辞書を読み,ハリウッド映画を真剣に「視聴」する。夜は,バーで酒を飲みながら,英語のネタ探し。
考えてみれば,本当に楽しい英語の武者修行です。
つまり,生活に英語を取り入れているということです。ちょっと工夫すれば,英語を学ぶ機会はどこにでもありそうです。今は、昔の私の何倍も恵まれた条件で英語の武者修行が楽しめます。
Yes, You can do it!
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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