先日、見事な満月をちょうどブロードウェイから見たので、写真を撮ってみました。
日本では、古代から、月の満ち欠けに合わせて農耕していた所以もあり、満月の夜に、豊作祈願のため稲穂に見立てた、すすきをお供えした庭や縁側で「月見酒」とか、「お月見」と言って、見事なお月様を愛でながらお団子を頂いたりしますね。
満月には、美しい、素晴らしい、こころ落ち着く、などと言う形容詞が当てはまるようです。
「月とすっぽん」などと言う諺もありますね。同じ丸いものなのに、誰が見ても全く様子の違うもののことを表すようで。
実は、アメリカにも、月を使った色んな諺や、月を使った表現があります。ジャズのスタンダード曲の歌詞なんかにも出てきます。では月を使った表現をいくつかご紹介しますね。
Over the moon(オーバー・ザ・ムーン)
月にも昇る心地、といったところでしょうか。もう幸せで幸せで、しょうがない。例えば、ずっと好きだった彼にプロポーズされた、とか。ね?
I’ve been over the moon ever since I got engaged.
「婚約してから、私はもう、すっごく幸せ、、、」
皆さまよくご存知の、オーバー・ザ・レインボー(虹の彼方に)という表現も、同様の意味合いを持つ事があります。
Once in a blue moon(ワンス・イン・ア・ブルー・ムーン)
これもよく使う慣用句です。「たまーに」と言う感じでしょうか。「あのレストランには、よく行かれるのですか?」などと言う質問に、「Once in a blue moon.」たまにね、と言うように使います。
ブルームーンというのは、めったに見られない、青い月の事なのだそうです。ジャズ・スタンダードの曲に、ブルームーンと言う曲もあります。
MoonShine(ムーンシャイン)
これはアメリカでは有名な、密造酒のことです。アメリカでは昔、禁酒法時代というのがありました。アルコールは人間の心身の乱れを引き起こすので、法律で禁止すべきである、と言うキリスト教会からの強い要望があり、お酒の製造販売が禁止されたのです。そんな時に、山奥で暮らす人々が、こっそりと裏山でとれたフルーツなどを使って、見つからないように夜な夜なコトコトと「月の光」で蒸留密造酒を作っていました。
現在では、法律で許可されているそうです。先日も、ファーマーズマーケットで、売っているのを見かけました。
ask for the moon(アスク・フォー・ザ・ムーン)
月に頼んでも、願いは叶わないのですって。残念ながら、「願いが不可能なこと」を言います。
She doesn’t ask for the moon.
彼女は、無い物ねだりをしない → 堅実である
っていう感じかな。
honeymoon(ハニー・ムーン)
言わずと知れた、日本語でもハネムーンですね。結婚式の後の、2人だけのあつあつの楽しい旅行です。ところが、このことばの由来は、実はちょっと信じがたいような厳しい意味があるのだとか。
もともと、月が出ている時間というのは短くて、つまり、スイートなハニーのような(口喧嘩の無いような)状況は、結婚式の後、短い間しか続かない、と言うような意味なのだそうです。転じて、「楽しい時間はそう長くは続かない」といったディープな意味もあるのだそう。人生は深いのう。
では最後に、ちょっと面白い話で締めくくりましょう。
ところ転じて品変わる、とはよく言ったもので、「満月」は日本人としては心が落ち着くとか、安らかになるというのが普通だと思っていました。
しかし、なんとアメリカで言われているのは真逆で、満月が出ると、人々は異様に興奮するのだそう。ウルフマン(狼男)に変身するのも満月ですが、変身までしなくても、なんだか武器を持って戦いたくなるような、そんな血が疼く、のだそうです。
そういうアメリカ映画が多いのも理由だそうですが、なんともはや。ラテン語では、月のことをルナと言うそうですが、ルナティックと言う言葉は、狂気と言う意味なのだとか。
日本人とは、まるで「月とすっぽん」の違いですねぇ(笑)
おあとがよろしいようで、、、
ではまた来週、
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。