“Stand up, please”これが失礼な表現だといわれると,戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか。
pleaseもついているし,日本語にすれば「どうぞ,お立ちください!」って感じ!
別に問題ないんじゃないの?って思います。
実はこれって,とんでもない表現だったのです。
<Stand up & Sit down, please!>
日米のイベントで日本人司会者が,“Stand up, please”,“Sit down, please!”とアナウンス。
それは,来客全員に向かって「立て!」,「座れ!」と命令口調で言っているのです。
中学校の英語のクラスを思い出してください。始まりと終わりで,この表現使っていました。
日本語では,「起立!着席!」なんとなくきびきびして,いい感じです。それが勘違いです。
教室ではなく,公式の場で、「立て,座れ!」と言われたら,あなたはどう感じますか。不愉快ですよね。‟Please“がついているから,丁寧な表現になる訳ではありません。
そもそもPleaseは,「~してくださいませんか?」というお願いの表現ではないのです。
プリーズの意味は,あなたが同意して,更に従っていただければ「嬉しい」ということ。
相手に,直接行動をさせる命令口調は,英語では日本語の数十倍,強引で,失礼な表現になります。日本語と英語の違いがそこに鮮明にでるのです。要注意です。
先ほどの日米イベントの司会の「立て!座れ!」は,お分かりのように不適切であり,さらに出席者(お客様)を不愉快にしました。
アメリカでは,国歌に対して敬意を表することが義務付けられています。生活にも密着しており,子供のころから胸に手を当てて敬意を表し、国歌を聞くことが身についています。
ですから,基本的にアメリカでは国歌斉唱(演奏)に対して,国民に起立を促すアナウンスはありません。国歌を聞いたら立ち上がり胸に手を置き敬意を表すからです。
アメリカでは、外国人が参加するイベントでは,次のようなフレーズがアナウンスされます。
“Please , rise for the National Anthem”
「国歌斉唱(演奏)のため,ご起立ください」
です。
please を冒頭にもってきて,「趣旨に賛同していただき」と前置きし,“Stand up!”という強い命令口調を避け,「国歌斉唱(演奏)のために」と目的を述べています。
こうすれば、失礼な表現にはなりません。参加者全体に趣旨説明をしたうえで、起立してもらうということになります。参加者も納得できる表現になります。
もう一つ有名な例を挙げておきましょう。アメリカ合衆国大統領の就任式や有名なスポーツイベント等で,アメリカの有名な歌手が国家を斉唱(演奏)します。
その時のアナウンスは,次のようになります。
“To honor of America and perform our National Anthem, Please welcome Lady Gaga!”
「アメリカの名誉のために国歌斉唱するレディー・ガガに歓迎の意を表してください!」
アメリカ国歌を斉唱するレディー・ガガに敬意を表する(welcome)という表現,素晴らしいですね。又,われわれの(our)国家ということで気分(愛国心)が高揚します。
アメリカ国民は立ち上がり,レディー・ガガを歓迎し,国歌に敬意を表するのです。
<動詞にupをつけることによって生まれる効果>
ここで,動詞にupをつけることによって生まれる効果をまとめておきましょう。
upを英語の動詞につけることにより,行為の「程度,完全性,命令口調」が強調されます。
英語の動詞+upの形にすると,効果や意味が強調されます。辞書に書かれていない意味や感覚を、語感といいます。この語感を頭に入れておくと英語表現が非常に豊かになります。
今回は,冒頭で紹介したstand upを含めて,役に立つ表現を3つ紹介しましょう。
◯まっすぐに上がる動作
Stand +up・・・直立する,すぐに立ち上がる動作を表します。
◯全力で集中する態度
Listen +up・・・全力で,聞くことに集中する
◯音量などを上げる、増加させること
Speak +up・・・話し声を大きくする,大声で話す
それでは、それぞれの表現を説明していきます。
<Listen up! 集中して聞きなさい!>
前回お話したように,聞くことに専念しろという命令です。聞く(listen)という行為を完全に実行しなさいという期待が込められています。
日本語の命令口調と違うところは,アメリカ人には、大声で一斉に動作を強要するという考えが避ける傾向にあること。聞くという動作に集中しなさいと相手に促すこと。
「聞け~!」と怒鳴ったところで,人の話を素直に聞く人はあまりいません。反対に,「なぜ怒鳴る?なぜ命令する?」といった反発が強くなるかもしれません。
そういったマイナスの心の動きは,聞くという行為につながりません。“Listen up!”は、聞くことに集中しなさいと促しています。
お互いに言っていることを聞き,理解することが、アメリカの文化です。
<Speak up! 大きな声で話しなさい!>
upには,程度を上げる,増加させるなどの意味があります。
ラジオやステレオで音楽などを楽しんでいる場合,もう少し音量を上げてほしいときなど,
Turn up the volume!「音量を上げて!」というときと同じ感覚です。
Speak upのupは何を増加させるのでしょう。相手の話している声の音量を上げろということです。つまり声が聞こえないので,「大きな声で話しなさい」と言うことになります。
Would you speak more loudly?
「もう少し大きな声で話していただけますか?」
と丁寧な表現が使えれば最高です。
しかし,大きな会場などで,話が全然聞こえない場合,丁寧な表現より,直接的な“Speak up!”「声を大きくしてください!」という表現は簡潔で便利です。
自分の意見を言うのが恥ずかしくて,声が小さくなる場合もあります。相手にもう少し大きな声でと促されても,なかなか応じられない場合もあります。
そんな時に,”Speak up!”と「大きな声で!」背中を押されると声が大きくでることもあります。upをつけることにより,ちょっとインパクトの効いた表現になるのです。
動詞+upを使った命令口調は,その使い方をしっかり理解したうえで使用できれば,物事を進めようとするときに,非常に効果的な英語表現となります。
英会話の中で効果的に使ってみてはどうでしょうか。
執筆家・英語教育・生涯教育実践者
大学から防衛庁・自衛隊に入隊。10年間のサバイバル訓練から人間の生について考え、平和的な生き方を模索し離職を決断する。時を同じくして米国国費留学候補者に選考され、留学を決意。米国陸軍大学機関留学後、平和を構築するのは、戦いを挑むことではなく、平和を希求することから始まると考えなおす。多くの人との交流から、「学習することによって人は成長し、新たなことにチャレンジする機会を与えられること」を実感する。
「人生に失敗はなく、すべてのことには意味があり導かれていく」を信念として、執筆活動を継続している。防衛省関連紙の英会話連載は、1994年1月から掲載を開始し、タモリのトリビアの泉に取り上げられ話題となる。月刊誌には英会話及び米軍情報を掲載し、今年で35年になる。学びによる成長を信念として、生涯学習を実践し、在隊中に放送大学大学院入学し、「防衛省・自衛隊の援護支援態勢についてー米・英・独・仏・韓国陸軍との比較―」で修士号を取得、優秀論文として認められ、それが縁で定年退官後、大規模大学本部キャリアセンターに再就職する。
修士論文で提案した教育の多様化と個人の尊重との考えから、選抜された学生に対してのキャリア教育、アカデミック・アドバイジングを通じて、キャリアセンターに新機軸の支援態勢を作り上げ、国家公務員総合職・地方上級職、公立学校教員合格率を引き上げ高く評価される。特に学生の個性を尊重した親身のアドバイスには、学部からの要求が高く、就職セミナーの講師、英語指導力を活かした公務員志望者TOEIC セミナーなどの講師を務めるなど、大学職員の域にとどまらぬ行動力と企画力で学生支援と教員と職員の協働に新たな方向性をしめした。
生涯教育の実践者として、2020年3月まで東京大学大学院教育研究科大学経営・政策コース博士課程後期に通学し、最年長学生として就学した。博士論文「米軍大学における高等教育制度について」(仮題)を鋭意執筆中である。
ワインをこよなく愛し、コレクターでもある。無農薬・有機栽培・天日干し玄米を中心に、アワ、ヒエ、キビ、黒米、ハト麦、そばを配合した玄米食を中心にした健康管理により、痛風及び高脂質血症を克服し、さらに米軍式のフィットネストレーニング(米陸軍のフィットネストレーナの有資格者)で筋力と体形を維持している。趣味はクラッシック音楽及びバレエ鑑賞。
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