英語を仕事にしていると,英語を苦手とする人から必ず聞かれることがあります。
「これって英語でなんて言うの?」
という質問。
【本 “book” 】や【ゾウ “elephant” 】,【社会 “society” 】などのように,
「日本語と比較的同じ意味を表す英語がある」場合は良いのですが,
そうではないものも数多くあります。
例えば,
「[お疲れ様]って英語では何ていうの?」
これ,本当によく聞かれます。
この質問に,あなたならどう答えますか?
―文化・習慣を知ること―
「お疲れ様です。」
「よろしくお願いします。」
これらの表現に対して,「英語でどう言うの?」とよく聞かれます。
私は常々,
「日本語をそのまま英語に訳そうとしない」
「英語もそのまま日本語に訳そうとしない」
を心がけています。
なぜそう心がけるのか?
それは,言葉とはただの言語ではなく,必ずその背景にそれぞれの文化・習慣等が関わってくるから。
ちょっと最近あったエピソードを紹介しますね。
つい先日,近所に住むスウェーデン出身の人と立ち話をしていたときのこと。
その方は私にこう言ってきました。
“My coworker asked me if we do “mamemaki” on “Setsubun Day” in Sweden.”
(職場の同僚が,スウェーデンでは,節分に豆まきをするの?って訊いてきたんだよ。)
と。
もちろん,
「それは日本の伝統行事なので,スウェーデンではしません。」
と答えたそうなのですが,私はここに
「日本語をそのまま英語に直訳することとリンクするなぁ。」
と感じたのです。
というのも, きっとその同僚の方は,海外や英語に触れる機会がほとんどなくただ単に,
「日本ですることは外国にもあるんだろうな」と思っていただけ。
純粋に「海外にもあるのかも」と思っただけです。
でも,日本独特の文化が海外共通ということはありません。
ですので,日本に詳しくない海外の人に対して
“It’s Setsubun today! Let’s throw beans!”
(今日は節分だ!豆まきしよう!)
と言っても,
「なんで豆をまくの?」
と疑問に思われるのは,想像に難くないと思います。
そう考えると,
「お疲れ様です。」や「よろしくお願いします。」と言う表現って,一旦立ち止まって
「これってもしかして,日本独特の表現なのかも」
「英語圏の国でも使ったりするんだろうか?」
と疑問に思うことが大切。
そこからちょっと調べることで,
「英語ではそのような表現はないけど,こう言う感じで言うんだ」
ということがわかり,異文化理解にも繋がります。
そして,「日本語を英語にそのまま訳す」という癖も少しずつ変えることができる思うのです。
―英語で「お疲れ様」は?―
「お疲れ様です」という言葉の本来の意味を考えると,
・ただの仕事上挨拶
・ねぎらいの言葉
・感謝の言葉
・仕事を先にあがる時の言葉
が考えられると思います。
これらをまとめて一言で「お疲れ様です」なのですが,英語ではその表現はありません。
つまり,その状況によって使い分ける必要があります。
ただの仕事上の挨拶であれば, “Hi!” で大丈夫。
ねぎらいや感謝の言葉であれば,
[相手の成果を讃えて]
“You did a good ( great / excellent ) job.”
(よくやったね)
“Nice work today!”
(今日はよくやったね!)
“Thank you for your hard work.”
(大変な仕事をありがとう。)
[仕事を先にあがる時]
“Bye!”や “See you tomorrow.”
などのように使います。
「[お疲れ様]なので, “You are tired.”(あなたは疲れています。)」
と訳したくなる人もいるかもしれませんが,そこは一旦立ち止まって考え,
「その時,そのときのシチュエーションにあった挨拶をすれば大丈夫」
と覚えておきましょう。
ちなみに,
「よろしくお願いします」
これも状況によってとなります。
これから仕事を一緒にするという意味の挨拶であれば,
“I’m looking forward to working with you.”
(一緒に仕事をするのを楽しみにしています。)
となりますし,普通にメールなどで締めくくりに使う場合は
“Thank you!”
“Thank you in advance.”
([前もって]ありがとうございます。)
人との別れ際に
「それではよろしくお願いします」
という場合は,
“Goodbye”
“Thank you for today.”
(今日はありがとうございました。)
“Have a good day.”
(良い一日を。)
のような挨拶でOKです。
―言語習得は筋トレと同じ―
私たちにとって英語は外国語。
日本での学習はどうしても「正解・不正解」で見てしまいがちです。
これは日本人の悪い癖。
でも,言葉というのは「○○=□□」だけで片付かないことが多くあります。
ですので,日本語をそのまま英語に訳すというのはなるべくやめるようにしたいもの。
一旦,私たちの母語である日本語が介入すると,それは
「英語ではなく,日本語で理解した」ことになってしまいます。
そのためにも,
言いたいことを英語で言えるようにする,
聞いた英語を日本語にせずに聞けるようにする
読んだ英語をそのまま英語で理解するようにする
というトレーニングが必要になります。
次回は英語で理解するトレーニング「リーディング」についてお話したいと思います。
英語習得は筋トレと同じ。
すぐに成果を実感できないかもしれませんが,やればやっただけ必ず身につきます。
「筋肉は裏切らない」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。
英語のトレーニングも裏切りません!
ですので,年末には
「今よりも少し英語で理解できている自分」
を想像して,今年は去年よりも英語学習の時間を増やしてがんばりましょう!
それではまた来週〜♪
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。