あなたは食事をするとき,どのようにして食べ始めますか?
・手を合わせて「いただきます」という。
・「いただきます」とだけ言う。
・手だけ合わせる
中には「何もしないし,何も言わない」という方もいらっしゃるかもしれませんが,
小学生の頃,学校給食などを食べる際に,みんなで
「いただきます」と言っていた人も多いと思います。
この「いただきます」という言葉,英語ではどのように言うのでしょうか。
あなたはどのような表現を思いつきますか?
―英訳するときは【状況と意味】を考えよう―
私たちが日本語の表現を英語に訳そうとする時,
つい,「そのままの言葉を,そのまま訳そうとする」ことをしがち。
毎度言っていることで恐縮ですが,日本語と英語は異なる言語。
言語とはその文化的背景も絡んできますので,
「本」= “book”
「カバ」= “hippo”
のようなどの国でもイメージできるものであれば良いのですが,
「いただきます」を英語に訳そうとして,
「[いただく]= “take”かなぁ, “have”かなぁ?
じゃあ,「食事をいただく」なので, “I will have a meal.” でいいのかな。」
のように考えてしまうかもしれません。
もちろん,その方法で通じる場合もあると思いますが,
基本的には,伝えたい表現の「意味」または「状況」を考えることが大切だと思うのです。
“I will have a meal.”だと,そのまま「私は食事をとります。」というニュアンスになってしまいます。
たとえば,同じ職場の同僚と休憩室やロッカー室にいたとします。
そこで, “I will have a meal.”と言ってしまうと,
(私はこれから食事をするよ。)
というニュアンスにもなります。
つまり,私たちが思う「いただきます。」とは全然違う意味になるかもしれません。
そこで日本語の「いただきます」の【意味】もしくは【状況】を考えるのです。
目の前に食事が並んでいて,これから食べようとしている状況を想像してみてください。
どんな言葉が浮かんできましたか?
「食べましょう!」
「さあ,食べよう!」
という感じの言葉が浮かんできた!という人もいるかもしれません。
そう,そうなんです!
その感じなんです。
それを英語にしてみると,
“Let’s eat!”(たべましょう!)
ですよね。
あら不思議。
「[いただきます。]って英語で何て言うの?」
と日本語の表現をそのまま英語にしようとしたあまりに,
どう訳していいかわからなかった英語が,
“Let’s eat!”という,簡単な表現で表せちゃったじゃないですか!
でも「いただきます」だから,やっぱり「いただく=もらう?」という英語を探しちゃいそうなんですけど…
という声も聞こえてきそうです。
では,「いただきます」とはどういうことかを考えてみましょう。
―言語は文化も影響する!?―
「言語は文化的背景も大きく関わってくる」とお伝えしましたが,この
「いただきます」
も例外ではありません。
私たち人間は,動物や植物など「他の生命」をいただくことで生きています。
野菜,お肉,お魚…みんな命です。
味噌だって植物である大豆,米,麦などを生きた麹菌で発酵させたもの。
やっぱり「命をいただいている」のですね。
その命にフォーカスを当てすぎてしまい,食事前に
「あなたの命をいただきます」を直訳して,
“I’ll take your life.”
なんて言ってしまったら,ちょっとしたホラーかサスペンスでございます。
本来,「いただく」という言葉はもともと神道に由来しているそうなのです。
儀式で神様と同じものを食べる際,受け取った食べ物を頭の上,つまり頂(いただき)に掲げたことから,「食べる」=「いただく」と使われるようになったそう。
そこから,「これから食べさせていただきますね。」という食材への感謝の気持ちを表す食事前の挨拶となったんですね。
英語圏の国々でも宗教によって,食前・食後のお祈りの言葉を唱える方も多くいらっしゃいます。
しかし,日本で言うような一般的な「いただきます」にぴったりと当てはまる英語はありません。
ですので,その状況を考えて
“Let’s eat!”(食べましょう!)
や,ちょっとカジュアルに,
“Let’s dig in!”(食べましょう!)
※ “dig in”とは「掘る」ということ。食事のお皿をガツガツ掘るという感じでしょうか。
と,「さあ,食べよう!」という英語にすれば良いのですね。
―「ごちそうさま」は?―
「ごちそうさま」を英語でいうとどのような感じになるのでしょうか。
きっともう,
「ごちそう」って「ご馳走…ゴージャスな食事?」だから…
と,直訳しようとした方,いらっしゃらないと思います。
反対に食事を食べ終わった【状況】を想像して,その場面に合う英語を考えているのではないでしょうか。
そう,大正解!
食事を食べ終わった時,どう思うか,何と言うかを考えればいいんです。
あ,できれば「ポジティブ」な表現にしましょうね。
次に上げる例で,あなたが考えた英語に近いものはありますか。
例えば,
“Thank you. I enjoyed the meal.”
(ありがとう。食事を堪能しました。)
“Thank you. I enjoyed it.”
(ありがとう。堪能しました。)
※ “it” は「今食べた食事」のこと。
“Thank you for the meal.”
(食事をありがとう。)
“Thank you for the great meal.”
(すばらしい食事をありがとう。)
“That was delicious.”
(美味しかったです。)
“That was tasty”
(美味しかったです。)
“That was amazing.”
(美味しかったです。)
“It was very delicious.”
(とても美味しかったです。)
“I’m full. Thank you.”
(お腹いっぱいです。ありがとう。)
“I’m done. Thank you.”
(食べ終わりました。ありがとう。)
いかがでしたでしょうか。
いろいろな表現があって,「ごちそうさま」のような決まったものはありません。
でも,
「ありがとう」
「美味しかった」
「お腹いっぱい」
のような,食事に満足したかどうかを表現するのが一般的です。
何と言っていいかわからない時は無理をして上の文章にしなくても,
“(That was) Delicious. Thank you!”
だけでも大丈夫!
相手に感謝の気持ちを伝える,ということを心がければ問題ありません。
―「一人の時は?」―
「いただきます」「ごちそうさま」を英語で言う場合は,どのように言うか?
をお話してきましたが,アメリカなどでは特に何も言わずに食べはじめ,何も言わずに食べ終えることも珍しいことではありません。
一人の場合で,何かを言うとすれば,
食事前:
“Looks delicious.”
(美味しそうだ。)
“I’m starving.”
(腹ペコだ。)
食 後:
“I’m full.”
(お腹いっぱいだ。)
“Thank you!”
(ありがとう,と食材に感謝)
など,特に決まりはありません。
食材や食事を作ってくれた人,農家の方々や流通に関わった方々などへの感謝の気持ちなどを表すと良いかもしれませんね。
ところで,「いただきます」の代わりに, “Let’s eat!”(食べましょう!)を使うと言いましたが,そもそも
「食べましょう!」なんて言うの?と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
アメリカでは,同じテーブルについている人たち全員の食事が揃ってから
「さあ,食べましょう!」と言って食べ始めます。
日本では,食事が来た順番に食べ始めるという人もいるようですが,基本的には全員の食事が揃ってから食べるので, “Let’s eat.”という表現がよく使われるのですね。
今回,この内容を書いていてずっと頭にはご馳走がチラついています。
あ〜,美味しいラーメン食べたいなぁ。
あなたの一番好きなラーメンは何ですか?
醤油,塩,味噌,とんこつ…
私は…とんこつです(笑)
それではまた来週〜♪
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。