今回は、それまで当たり前に思っていたことが、ニューヨークにきてひっくり返ったこと3点をお話します。
<時間に正確すぎると、かえって迷惑がられる!>
まずは、時間に正確すぎると、かえって迷惑がられる!という文化的ショック!
例えば、パーティーに「7時から」とあったら、日本人的には「6時50分頃」に着いて、7時にはワイングラスを持って笑顔でいる準備を整えたいところ。
でもニューヨークでは、それはホストをパジャマ姿で迎えさせるリスクすらある暴挙(笑)
アメリカに来てすぐの頃に、知り合いの弁護士さん夫妻のバーベキューのお呼ばれしたときのこと。玄関前で15分ほど待たされ、一体パーティーなのにどうなっちゃってるんだろう、緊急の買い物にでも行ったのかしら、とぼけっと待っていたことがありました。
後で聞いたら、ご夫婦でシャワーを浴びて、着替えている真っ最中だったとか。
当時は、アメリカの文化を知らなかったので、ただ、なんて時間にだらしのない人たちなんだろう、と呆れてしまいました。
だいたいの感覚としては
“Alive fashionably late / アライブ・ファッショナブリー・レイト(計算された遅刻)”
の精神で、30分遅れぐらいがむしろ礼儀。
昨今では
「7時集合って書いてあるけど、8時ぐらいに着いてちょうどいい」
”Make a grand entrance / メイク・ア・グランド・エントランス(主人公は最後に登場!)”
私だけじゃなく、ホストも含め、誰もが主人公を狙っています(笑)
先日、自分がちょっとしたディナーパーティーを開いた時、7時頃から始めるわね、と告知して、そのつもりで、7時半ぐらいを目安に合わせてのんびりクッキングをしていたところ、日本人の女性が7時10分前に現れ、あたふたしました(笑)
<謝りすぎないほうがいい!>
二つ目は、謝りすぎないほうがいい、という逆転現象。
日本では「すみません」こそが潤滑油。道を尋ねるにも、メニューを聞き返すにも、ちょっとしたことでまず、「すみません」と頭を下げます。
でもこちらで同じように“Sorry”を連発していたら、逆に「何をそんなに悪いことしたの?」という顔をされます。
そんな、無意識の謝罪癖を断ち切るには、「私、何も悪いことしてない!!」と、はっきり自覚する必要があるのです。
演奏の現場にいても、この癖が抜けきれず、いつもお店の従業員さんたちに謝っているので、(自分が使ったグラスを下げてもらった時とか)、
これは、強く皆さんに申し上げたいです。
常に堂々と。めったなことで頭を下げる必要は無い!
”Sorry” を口にするのは、本当に大失敗をして迷惑をかけた時だけ。(微笑)
普段は、”Thank you”さえ口にしていれば、大概行けます。
<誰かと違うことを誇りに思っていい!>
最後は、誰かと違うことを誇りに思っていい、という人生観のひっくり返り。
日本では、空気を読むことが大事だとされ、みんなと同じで安心、という価値観が根強いですよね、同調圧力って言うのかな。
でもニューヨークでは、違うことがむしろ“ identity / アイデンティティ”。
変わっているね、ユニークだね、って言われると、それはなんと褒め言葉。
最初は「私って、変なのかな?」とちょっと不思議な気持ちになりましたが、今では「ありがとう、よくぞ気づいてくれました」と胸を張って言えるようになりました。
みんな違って、みんな堂々としている。それがこの街の美しさです。だから、ここにいると気持ちが楽なのかな、ニューヨーク!
こんなふうに、ニューヨークという街は、自分の中の当たり前を引き出しては、「ほんとにそれって、ここ(ニューヨーク)でもそう?」と問いかけてくる場所です。
自分への問いかけ、「あなたの常識はここでも通じるの?」と自分に問いかける。
そして気がつけば、そこに新しい価値観が、すっと入ってくる。
ここに長年住んでいると、当たり前になってきていることでも、たまに日本に戻ったときには、色々と感じることがあります。この大きな違い、考え始めると面白いですね。
自分がアメリカ仕様の自分と日本仕様の自分がいる、ダブルスタンダードになっていることにコンヒューズすることもあります(笑)
それではまた来週♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。