おはようございます。
木曜日のCozyです!
先日,何気なくテレビをつけたら,最新の文房具を紹介する特集をやっていました。
新作のノートや便利なハサミに続いて取り上げられたのは,ごく普通に見えるペンケース。
ところが紹介していたアナウンサーが一言,
「これはスペパがいいんです」
と言ったのです。
私は思わず「スペパ?」とクエスチョンマーク。
(頭の中では「コスパ」「タイパ」の仲間かな?)
(いや,スペシャルパフォーマンス?)
と勝手に想像をめぐらせました。
さてこの「スペパ」,どんな意味だと思いますか?
―「スペパ」って何!?―
この最新文房具の特集って,定期的にテレビなどで流れますよね。
機能的なノートやユニークな消しゴムなど,感心するものがたくさん。
それらを見ていると,つい自分も試したくなってしまうんですよね。
そんな中,あるペンケースが紹介されていました。
パッと見は何の変哲もないのですが,ケースを開けて上部を折り返すとそのままペン立てになるというアイデア商品。
机の上で自立し,中のペンが一目で見渡せるという仕組みです。
アナウンサーはにこやかに
「これはスペパがいいんです」
と言っていました。
その瞬間,私の頭には「?」が浮かびました。
スペパ…??
(あ,最近よく耳にする「コスパ」「タイパ」みたいな新しい略語?)
(スペパ……スペシャルパフォーマンス?)
そんなふうに勝手に推理していたら,答えはなんと「スペースパフォーマンス」。
つまり「省スペースで使える」,という意味だったのです。
ペンケースがそのままペン立てになるのですから,「狭い机でも場所を取りません」,というもの。
便利な発想だと感心しつつも,正直なところ私は「え,新しいのかなぁ」という気持ちでした。
だって私,数年前からこのタイプを愛用しているんですもの。
出先のカフェの小さなテーブルでも役に立ちますし,片づけも楽。
言われてみれば確かに“スペパがいい”んですよね。
―「コスパ」は和製英語!?―
そんな「スペパ」ですが,ここで思い出したのが「コスパ」という言葉。
「コストパフォマンス」を略して「コスパ」。
もうすっかりおなじみの言葉になりましたよね。
最初に聞いたときは,
「英語で費用対効果が良いって “cost performance”を使って言うんだ」
と思いました。
でも違ったんです。
実は「コストパフォーマンス」って,英語には存在しない和製英語だったんです。
“cost”は「値段,費用」という意味ですよね。
そして “performance”は本来「実績」「成果」「性能」という意味。
それらをくっつけて「コスト・費用に対する成果」,
だから “cost performance”,となったのだと思います。
でも英語での会話で “cost performance”って言ってしまうと通じないんです!
ではどう言えばいいのか。
英語では “cost-effective” や “good value for money” という言い方をするんです。
“cost-effective”は「費用に効果的」という意味になり,
“good value for money”は「お金に対して良い価値」,つまり「支払ったお金に見合うだけの価値がある」という意味になります。
たとえば,「このレストランはコスパがいいね」と言いたいときは,
“This restaurant is good value for money.”
(このレストランは支払ったお金に見合うだけの価値があるね=コスパがいい)
や,「このプリンターはとてもコスパが良い」と言いたい場合は,
“This printer is very cost-effective.
(このプリンターはとても費用に効果的です=コスパが良い)
と表すことができます。
さらにもっとカジュアルに
“It’s worth it.”
(その価値があるよ)
という表現もよく使われます。
“This restaurant is cheap and delicious. It’s worth it.”
(このレストランは安くておいしい。コスパがいいよ。)
のような感じですね。
いずれも日本語の「コスパ」と同じ発想ですが,このように実際の言い回しは違うんですね。
―「タイパ」=時間の効率を考える日本人―
時間の効率を「タイムパフォーマンス」と呼ぶ発想はユニークですが,これも和製英語。
おそらく「コストパフォーマンス」という言葉が定着してきたので,今度は
「時間の効率が良い」という意味で「タイムパフォーマンス」という言葉が生まれたのだと思います。
英語では,
“time-efficient”(時間に効率的な)
“time-saving”(時間を節約する)
が同じ意味として使われます。
たとえば「このアプリはタイパがいい」は
“This app is really time-saving.”
のように表現しますし,
長いだけの退屈な映画を見たときは,
“The movie was not worth the time.”
(あの映画は時間に見合う価値がなかった=タイパが悪かった)
となります。
日本語では「タイパ」と省略して軽やかに言いますが,英語では
「時間に見合うかどうか」
という実用的な表現に置き換わるのですね。
今回の「スペパ」も「コスパ」という言葉が生まれ,そこから「タイパ」という言葉ができたという同じ流れで生まれたのだと思います。
机のスペースにまで価値を見いだすのは,日本人らしいこだわりなのかもしれませんね(笑)。
これをあえて英語で言うなら “space-saving” でしょうか。
テレビで紹介されたペンケースのような場合は,
“This pen pouch is really space-saving.”
「このペンケースはスペースを節約できる=省スペースです=スペパがいい」
と言えば通じる…と思います。
日本語では「スペパ」と略してすぐに浸透していきますが,英語ではストレートに「省スペース」を表す表現をそのまま使う。
ここにも日本語と英語の感覚の違いが現れていて,面白いですよね。
―言葉は文化を映す鏡―
「コスパ」,「タイパ」,「スペパ」――これらの言葉に共通するのは,
「限られた資源を効率よく使いたい」
という考え方。
「お金,時間,スペース」,どれも生活に欠かせないものだからこそ,私たちは「どう活かすか」に敏感になるのだと思います。
だから,その感覚をわかりやすく表すための言葉を自分たちで作っていくのかもしれませんね。
言葉は文化を映す鏡といいます。
私たち日本人が「パフォーマンス」という一語を軸に新しい言葉を生み出すその背景には,生活の工夫や価値観がそのまま映し出されているような気がします。
英語に置き換えて考えると
「なるほど,そう言うのか」
と新しい発見があるのも楽しいところです。
これからもまた新しい「パ」が登場するのかもしれません。
次にどんな言葉が生まれるのか――ちょっと気になりませんか?
ということで,
それではまた来週〜♫
See you next week ~♪
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。