こんにちは
NYのKayoです。
今回は病院システムの違いについてのお話です。
「ちょっと喉が痛いな、熱っぽいかな」と思ったとき、日本にいた頃なら、迷わず近所の内科へ。診察室に入って「風邪ですね」と言われたら、その日のうちに抗生物質やら解熱剤やら胃薬やら、紙の薬袋をいっぱい持たされて帰ってきた記憶があります。
翌朝には、薬の効き目なのか安心感なのか、とにかく楽になった気がするのが日本流。
<ニューヨークはまず予約と検査>
ところが、ニューヨークで同じような、咳が止まらない、なんていう症状を訴えようと思ったらどうするか。
まずは家庭医(プライマリーケア)に予約。すぐ取れればラッキーですが、大抵は数日後。
夏休みや年末年始だと、ゆうに1ヵ月近く待たされることもあります。
熱が出ていても「その間は市販薬で様子を見てね」などと言われるのがオチです。
ようやく診察にたどり着いたと思ったら、「まずは血液検査とスワブ検査、それから必要なら専門医に紹介しましょう」と流れ作業のように検査へ。
以前は血液検査には3日ぐらいかかりました。(最近は24時間でできますので、すごい進歩です)。
その薬が自分の行きつけの薬局になければ、取り寄せなんてことにもなるし、結局、薬が手元に来るのは一週間後なんてことも。
日本だったらとっくに薬を飲んで元気になっているはずなのに……と叫びたくなる瞬間は数えきれません。
<アメリカの医療はとにかく大変>
でも、ここには文化的な発想の違いが潜んでいるらしい。
日本は、“とりあえず効きそうな薬で抑える”感じ。
対してアメリカは、“まず原因を特定してから最適な治療を”という姿勢。
もちろん検査を重ねれば、医療費もどんどん跳ね上がります。ニューヨークの医療費の高額さは、いくら保険に入っていても、目の玉が飛び出るほど。
薬も、ここアメリカでは、製薬会社が自由に値段を決めて良いらしく、本当に高額です。
そして、アメリカの病院といえば問診票の細かさも凄い。
「あなたは落ち込むことがありますか?」「お父さんの死因はなんですか?」「あなたのセクシャル・ライフは?」と、なぜ風邪で来たのに人生相談のようなプライベートな質問に答えねばならないのか、面くらいます。
薬局も一筋縄ではいきません。ようやく処方箋が出ても、すぐには受け取れないのが定番。
大概、各個人には、その人の保険を取り扱う、既に決まった薬局があり、そこへ取りに行きます。「準備に3時間」と言われても、実際はそれ以上待つこともしばしば。
また、「用意ができています」と言われても、その薬局に行列ができていれば、2,30分立ったまま長い行列で待つことも必須です。高熱がある時などは本当にしんどい。
日本のように診察室を出て数分後には薬が手に入るスピード感は、夢のように思えます。
<日本だとありえないアメリカ的>
極めつけは、ある冬の日。
プライマリー・ドクターから紹介されたMRIを撮りに行ったら、待合室で延々と待たされ、結局半日コースに。
何度尋ねても、「いいから、その場で待って」と言われるばかりで、時間は刻々と過ぎ、とうとう待合室には私1人に。
もう本当にブチ切れそうになって受付の人に尋ねたところ、担当医はもうとっくに帰ってしまったと言われ、泣きそうになりました。完全に忘れられていたのです・・・。
途中で尋ねた時も誰も調べてもくれず。そういう人間が病院で働いていることにも、本当に腹が立ちました。日本だったら、ありえないことですが、これはこれでアメリカ的、と苦笑するしかありません。
<日本では日本式、アメリカではアメリカ式で>
逆に、日本に一時帰国したときは、その速さに、こちらがたじろぐほど。
「検査もしないでこんなに薬をくれるの?」と、アメリカ式の、“まず疑え精神”が身についてしまったせいか、不安になるのです。
つまり、どちらのシステムにも良し悪しがあり。
最近は私はこう割り切っています。
日本に帰ったら、“安心パックの薬付き診察”をありがたく受け入れる。
ニューヨークでは“じっくり時間をかけて検査してもらう”と腹をくくる。
そうしないと、病気よりもストレスで倒れそうです。(笑)
ステレオタイプって言うと良くないことだと昔は思っていたけれど、でもやっぱり郷に行っては郷に従えで、いろいろな時と場所によって、ノーマルとアブノーマルは変わるんだなぁ、と実感する今日この頃です。
それにしても、こちらで「喉が痛い」と訴えただけでコロナやインフルエンザの検査一式を長い待ち時間とともに受けさせられたときには、「もういっそおうちに帰って、お布団の中でぬくぬくと、玉子酒でも飲んであったまった方が早いかも」と本気で思ったものです。
病院から戻って、ネットで送られてくるビル(請求書)を見てため息をつくのも、ニューヨーク暮らしの立派な“通過儀礼”のひとつなのかもしれません。
それではまた来週♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。

