先日、あるお店の前で見つけた注意書きの貼り紙。
そこには「自転車の絵」と共に、可愛らしくも勢いのある字で
“Don’t Stop!” と書かれてありました。
おそらく、お店の方が伝え語ったメッセージとしては、
「ここに自転車を停めないで!」
ということなのでしょう。
店員さんも、一生懸命に考えて書かれたのだと思います。
しかし皆様おわかりの通り、“stop”という動詞は基本的に、
「動いているその動作を止める」
「~をやめる、中断する、立ち止まる」
という意味ですよね。
自転車などを「停める」場合の単語…、
それは、そう、 “park”です。
「止める」と「停める」
ひらがなで書くと、同じ「とめる」でも、
このように漢字で書いてみると、イメージの違いがわかりやすくなります。
「停める」という意味の、この “park”という単語。
多くの人が最初に思いつくのは、名詞の「公園」という意味ではないでしょうか。
なのに、なぜ乗り物を「停める」という動詞の意味でも使われるのでしょうか?
“park”という単語は、もともと中世ラテン語の “parricus”、古フランス語の “parc”から来たと言われています。
その意味は、「囲い」「囲われた場所」「広い場所」。
つまり、「囲われた広い土地」のことを “park”と言っていたのですね。
野球場は “ballpark”、遊園地は “theme park”。
いずれも囲われた広い土地です。
中世イングランドでは、貴族たちが狩猟をする広い土地を “park”と呼んでいたそう。
石やレンガで土地を囲み、そこに鹿を放っていたそうです。
そんな、狩りをしに来る貴族たちの乗り物は主に馬車。
その馬車を “park”に停めるのですが、
その停めておく場所のことを「park内にある」ということから
“parking”と呼んでいたのだとか。
そこから「馬車を停める」という意味として、動詞の “park”としても使われるようになったと言われています。
また、もう一つの説もあります。
昔、軍事用の機材や榴弾砲などを「広く囲われた場所」である “park”に保管していたことがあったそう。そこから「parkに保管する」という意味で動詞の”park”が使われるようになり、それが「車などを駐車する」ことにも広がっていったという説もあるようです。
いずれにしても、「広く囲まれた場所」が “park”、
そして、そこに保管したり、停めたりすることも “park”と言うようになったのですね。
昔は狩猟や軍事機材などを置いていた場所だった “park”。
現代では、 「遊んだり、癒やされたりする場所」のように楽しいイメージです。
言葉だけでなく、その使い方、イメージも変わっていったのですね。
うちの近所にある公園も、一足先に河津桜が満開を迎えています。
そして、様々な人々、家族が写真を撮ったり眺めたりして春の訪れを楽しんでいます。
そんなみなさん、「公園」に「駐車(駐輪)」しています。
そう、 “park”に “park”しているんですね!
park に park!
こう考えていくと、やっぱり言葉って面白い!
そして、そのたくさんの自転車を見ていると、
日本は本当に自転車が多い国だということもわかります。
アメリカ、特に私のいたロサンゼルスは車社会です。
なので、自転車の比率は日本ほど多くはありません。
日本のようなママチャリと呼ばれる自転車ではなく、そのほとんどはロードバイクのようなスポーツタイプです。
駐輪するときは、ワイヤーロックなどでぐるぐる巻きにして、それはもう厳重にしておかないとすぐに盗まれてしまいます。
私も運転免許を取得するまでは、自転車で移動していましたので、駐輪する場所にはよく困っていました。
ショッピングモールやシェアバイクなどは専用の駐輪場所がありますが、一般的なお店などには駐輪場がない場所が多いんですね。
ですので、ちょっとした買い物や食事で駐輪するときは、この写真のように柱や木にくくりつける感じで停めていました。
でもこれ、絶対に抜けない柱や木を選ばないと、柱ごと盗まれることもありますので要注意!注意はしていても、タイヤだけ盗まれるなんてこともあるので驚きです。
さて、冒頭のお店の貼り紙、“Don’t Stop!”。
本来であれば、
“No bicycle parking”(駐輪禁止)のように書けばよかったんですね。
でも、もしかしてその貼り紙…。
“Don’t Stop!”(止まるな!)
「店の前に自転車停めちゃダメ!止まらずに通り過ぎて!」
ということだったのかもしれません。
なんだかそんな気もしてきました。
ということで、これから溺愛する愛犬の散歩に
近所の大きな公園に行って、春の訪れを感じてきます。
さて今日は、何台くらいの自転車が“parkにpark”しているかな?
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。