これまで,しつこいくらいに
「日本語をそのまま英語に訳すとちょっとダメな場合がある…」
とお伝えしてきました。
少しはみなさまのお役にたっていますでしょうか^^;
(立っていると言って!…心の声)
いろいろと皆様にお伝えしたいことを考えてみるとまだまだあるんですよね。
私がまだ英語教師現役だった頃,毎年,生徒をスピーチコンテストに参加させていました。
ある地方都市で開催されたコンテストに参加した際,私は観客席にいました。
司会をしていたどこかの英語の先生らしき方が,その時スピーチを終えた小学生にこのように質問しました。
“Where’s your position?”
その小学生は自分の野球チームについて英語でスピーチをしたのですが,その内容に関して先生がインタビューしたのです。
この違和感,お気づきでしょうか。
確かに日本語では,「あなたの守備はどこ?」と聞きます。
そして,その日本語をそのまま英語にしたのが, “Where’s your position?” です。
瞬間的に違和感を感じた私は,隣に座っていた同僚のネイティブに質問しました。
“I feel something strange with that expression. Do you really say like that?”
(あの表現に違和感があるんだけど,本当にああやって言うの?)
すると同僚は,”No.”と即答。
では,この場合どういうのがいいのでしょうか。
「守備(ポジション)はどこですか?」だから,「どこ=where」と思いがちですよね。
しかし,この場合は
“What’s your position?”
(あなたの守備は何ですか?=どこですか?)
となるのです。
日本の英語教育では,”where” = 「どこ」と学習しますが,基本的に”where”は「場所や位置」を尋ねるときに使います。
「野球のポジションだって,『場所や位置じゃん!』」と怒られてしまいそうですよね。
では,こう考えてみてください。
A: Where is the capital of Japan?
(日本の首都はどこにあるの?)
B: It’s in Japan.
(日本にありますよ。)
A: Where are you now?
(今どこにいるの?)
B: I’m on the second floor.
(2階にいるよ。)
A: Where’s your position?
(あなたの守備はどこにあるの?)
B: In the baseball ground.
(野球場にあるよ。)
ちょっとイメージつきましたでしょうか?
この3つの対話文はすべて間違いではありません。
しかし,純粋な意味として対話が成り立っているのは2番の対話のみなのです。
1番と3番の質問は,日本語表現を英語にしただけなので,返答もちょっと変な感じになっています。
この “where”という疑問詞はたしかに「場所」を訊いています。
なので,どうしても “where”を使いたくなります。
でもこの野球などの守備については,その「役割・担当」を訊いているんですよね。
ですので,正しくは
“What is your position?”
(あなたの守備は何ですか?)
となり,その答えは
“I’m at the third base.”
(三塁です。)
のようになるのです。
―それは省略だから?―
もっとわかりやすく言えば,
“What is the name of your position?”
(あなたの守備の名前は何ですか?)
の省略でもあるからなのです。
これと同じような質問に,最初の例にもあげた「○○の首都はどこですか?」の質問があります。
多くの人は,例の質問と同じように
“Where’s the capital of the United States?”
(アメリカの首都はどこですか?)
のような英文を作りがちです。
しかし,これでは先と同じように
“It’s in the U.S.A.”
(アメリカ合衆国にあるよ。)
という意地悪な返答を招きかねません。
これも野球の守備を訊いたのと同じく,
“What’s the capital of the U. S.?”
と訊くのが正解です。
これもやはり,「首都の役割」を含めているからという考え方もありますし,
“What is the name of the capital of the U. S.?”
(アメリカの首都の名前は何ですか?)
という英文の省略でもあるのですね。
―住所はどこ?―
住所を訊きたい場合も同様です。
「住所はどこですか?」
を英文にして,
“Where’s your address?” とは言いません。
これも,
“What’s your address?” なんですね。
「住所」を訊きたいわけですから,「○○区〇〇町○○番地」という
「その場所が,その人を住まわせる役割」となっているピンポイントな場所を知りたいわけです。
そう考えると, “what”のほうが適しているのです。
次の対話文でイメージしてみてください。
A: What’s your address?
(あなたの住所は?)
B: It’s 〇〇区〇〇町○○番地.
(○○区〇〇町〇〇番地だよ。)
A: Where’s ○○区?
(○○区ってどこにあるの?)
B: It’s in Tokyo.
(東京だよ。)
「どこ」ということを訊きたい場合は, “where”が基本ですが,このように場合によっては, “what” が適しているものもあるのですね。
それを「知っている」か「知らない」かでは,自然な英語使いも随分と変わってきます。
ぜひ,頭に入れておいていただけましたら幸いです。
ちなみに,この「幸いです。」という日本語表現。
私の出身地では「幸せます。」というのです。
東京で働き始めた当初,知らずに「〜して頂けますと幸せます。」とメールで書いたり,電話で言っていたりしたのを思い出して,ときに超恥ずかしくなることがあります。
きっとその時のメールや電話の相手は,
「幸せます,って何だよ。」
「どこ出身だよ?」って,思ったことでしょう。
“What’s your hometown?”
(あなたの出身地はどこですか?)
って。
“Where’s your hometown?”
でももちろん通じます。
でも,やっぱり “what”の方が自然なんですね。
これもきっと,「自分の出生を担ってくれた町」だからかもしれません。
やっぱり英語って面白いですね!
それではまた次回お会いしましょう。
※私Cozyの投稿一覧は↓の「Cozy(織田浩次)をクリックしてください☆
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。