「Smart(スマート)って英語,
もう日本では英語本来の意味として浸透しているのでしょうか。」
先日,このような質問を受けました。
確かに,最近では当たり前のように,
スマートフォン
スマート家電
スマートウォッチ
等,「スマート」という言葉がたくさん使われるようになってきました。
でも,本当にその「本来の意味」が浸透してきたのでしょうか。
その,「本来の意味」,あなたはわかりますか?
−世代で違う?「スマート」の使い方−
まだガラケーが主流だった頃のお話。
巷では,
「二つ折りがいい!」
「やっぱりワンセグ付きでしょ!」
「アンテナが光るタイプが好き。」
とか言っていた頃,ありましたよね。
いやぁ,懐かしい。
その頃,私はある長文読解教材を執筆していました。
その長文のストーリーは,
「ある主人公が携帯ショップへ機種変更をしに行く」というもの。
その中で,主人公が選ぶのに迷った3つの機種にある架空の名前を付けたのです。
Power Phone(パワーフォン),
Cool Phone(クールフォン),
Smart Phone(スマートフォン)と。
もちろん全て「架空の機種」です。
まだ「スマートフォン」なんて誰も知らなかった時代です。
その頃,英語で “smart” と言うと,ほとんどの人は,
「細い,細身の人」というイメージを持っていました。
だから,この長文読解問題を読んだ人も,
「ほっそりとした薄型の電話」
と思っていたそう。
しかし,「スマートフォン」が携帯電話の主流となった今,
“smart”と言う英語は本来の
「賢い,利口な,賢明な,洗練された」
という意味が浸透してきたのでしょうか。
あなたはどう思いますか?
あくまでも個人的な感覚ですが,おそらく答えは微妙。
なので,私の周りにいる若い世代と40代以上の世代の人たちにそれとなく聞いてみました。
すると,若い世代では「かっこいい感じ」という意見が多かったのに対し,
40代以上では,「スリムな体型」と答えた人が多かったのです。
確かに,若い世代向けの情報誌やファッション誌などでも「スマートな着こなし」のように,
「洗練された」というような使い方をしている記事を多く見かけます。
一方,私たち世代の頭はときが止まったまま。
「スマート」=「細い」は,和製英語ですので,私たちの世代も情報をアップデートしていきたいですね。
−「スマート」が「細い」になったのはなぜ?−
“smart”という英語は,
「頭の良い,賢明な,洗練された」などの意味がメインなのに,なぜ日本では
「体がほっそりとした」
という意味で使われるようになったのでしょうか。
一説によると,なんときっかけはアメリカのテレビドラマだそう。
1965年から放送されていたスパイドラマ「それ行けスマート(原題:Get Smart)」。
ご存知の方,いらっしゃいますでしょうか。
(NBC Television, Public domain, via Wikimedia Commons)
このドラマから, “smart” という英語がカタカナとして日本に入ってきたのだそう。
そのドラマの主人公は,スパイの「スマート(名前)」とその相棒のエージェント99。
彼らはカッコよくて,細身でおしゃれ。
このように主人公のスマートや相棒の女性がとっても洗練されたカッコイイ人達だったので,
「洗練された人,外見が良い人」=「スマート(主人公)はカッコよくて細身」=「細い人はスマート」
となった説が今のところは最も有力なのだそう。
でも,もともとはやっぱり「洗練された」から来ていたのです。
それが日本国内では違う意味に変化していった…,
言葉ってやっぱり面白いですね。
そう言えばこのドラマ,2008年にスティーブ・カレルとアン・ハサウェイのコンビでリメイクされていたんですって。
でも私はやっぱり,当時のものを見てみたいなぁ。
−じゃあ,「細い」を英語では…?−
「スマート」が和製英語だということはわかりましたが,
では,「体型が細い」を英語で表すとどういうのでしょうか。
それはみなさまご存知の,
“slim”(ほっそりとした,華奢な)
や,
“slender”(すらっとした)
です。
この2つは,「健康的で美しく痩せている」という良い感じの「細い」を表しますが,
普通に痩せている感じの場合は,
“thin” (細い)
“skinny”(やせている)
も使えます。
ただ,言いようによっては “skinny”は「骨と皮」のような意味合いもあり,
ネガティブに「痩せこけている」とも捉えられますので,
驚いたような表情で使うと,ちょっと失礼になっちゃうかも!?
−スマートは「頭がいい」「スタイリッシュな」等の意味−
英語の “smart”には「痩せている」の意味はなく,
「賢い,洗練された(スタイリッシュな)」等の意味が主。
なので,最近よく聞く「スマートスピーカー」も,「賢いスピーカー」なんですよね。
(辞書で “smart”を調べると,[高性能の・ハイテクの]という意味で載っていますが,結局はそれも「賢い」ということ)
うちにも賢いスピーカーがいらっしゃいます。
「アレ○サ,電気つけて。」
「ア○クサ,レッチリかけて!」
など,うちでも大活躍しているスマート家電です。
また,冒頭でもお話した一番多くの人が持っているスマートなもの。
それはスマホ。
これも「賢い電話(phone)」ということですよね。
確かに初期の携帯電話と比べたら,それはもう賢いです。
バブル期に出た初期の携帯電話「ショルダーホン」と比べると,ものすごく洗練もされていますよね。
まさに「おったまげー」です(笑)
ところで,スマホはスマートフォンの略。
なんで『スマート[フォ]ン』なのに,短くすると
『スマ[ホ]』
になるんですかね?
スマフォ,じゃダメ?
今日,周りの人に言ってみてください「スマフォ」って。
どんな反応されるのでしょうか。
きっとそれが答えなのかもしれませんね。
(オマケ:これが元祖スマートフォン?)
(General Artists Corporation-GAC-management., Public domain, via Wikimedia Commons)
ではまた来週〜♪
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英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。