以前,アリゾナ州だったかニューメキシコ州だったか忘れたのですが,
車を運転していて道に迷ったことがありました。
その時にラジオから流れてきた懐かしい曲が,
デビー・ギブソンの“Lost in Your Eyes”。
♪”I get lost in your eyes.”という歌詞から始まるのですが,
「お〜,正に今迷ってるじゃん。瞳の中ではなくて山の中だけど。」
なんて思って,
♪”I got lost in the mountain.”
とふざけて歌っておりました。
でも,これ使い方間違っていたんです。
あなたはこの間違い,わかりましたか?
―「迷っている」じゃなくて「迷った」―
“get lost”
“lose one’s way”
が出てきます。
“lost”の原形は “lose”です。
「道に迷う」を表現する時は,このようにいずれも “lose”(失う・見失う)という単語を使います。
“lose one’s way”は,「(だれだれ)の道を見失う」ということから,「道に迷う」と
わりと想像しやすいですよね。
対して,“get lost”は
「 “get” を用いて【“lost”の状態になる】」という意味合い。
ですので,「道に迷う」= “get lost”と辞書に載っているんですね。
でも私が山で迷っていたときに歌ったデビー・ギブソンの替え歌(私のオリジナル(笑)),
“I got lost in the mountain.”は,ま・ち・が・い なんです!
文章が間違っているのではありません。
迷っている「最中」に言ったこと自体が間違いなのです。
「あ,”got”は過去形だから, “I get lost.”なんじゃない?」
「迷っている最中だから, “I am getting lost.”だと思う。」
と思われた方,それも違うんです。
通常, “get lost” を使う場合は過去形として使うんです。
もう少し詳しく言うと,
「昨日,山で迷っちゃったよ。」
「今日,新宿駅で迷っちゃって遅刻しちゃったんだよ。」
のように,「(今は解決したけど)道に迷った。」と,
【過去のことを表す】ときに使うのです。
ですので私の場合,
もう迷子から脱して,目的地に到着したあとで,
“I got lost in the mountain.”(山で道に迷ったよ。)
と言えば問題なかったのですが,
迷っている真っ只中で言ってしまったのは間違いだったのです。
―迷っている最中は?―
じゃあ,「今,まさに迷っています。」という場合はどう言えばいいのか。
それは簡単。
“I am lost.”
と言えば良いのです。
“Excuse me. I’m lost. Could you tell me how to get to the station?”
(すみません。道に迷ってしまいました。駅までの行き方を教えていただけませんか?)
のように,「今,道に迷っています。」という場合は,
“I’m lost.”
と言えばOK!
もちろん,主語が自分を含めて複数であれば
“We are lost.”(私たちは道に迷っています。)
「彼・彼女」のような第三者を言うのであれば,
“He/She is lost.”(彼/彼女は道に迷っています。)
と 主語にあわせてbe動詞を変えればOKです。
―「道に迷わないでね!」―
「目的地に到着した後や,過去のことに対して言う」表現でしたね。
では, “I get lost.”のように現在形の場合はどうなのでしょうか。
“get”の現在形を用いる場合は,
“I get lost easily.”(私は簡単に道に迷う。=道に迷いやすい。)
“My mother often gets lost.”(私の母はしょっちゅう道に迷っている。)
のように,(今でも過去でもなく)「日常的に」という意味合いとなるんですね。
さらにもう一つ。
人に対して「道に迷わないでね。」のように声がけをする場合も “get lost” を用いて
“Don’t get lost!” (道に迷わないでね!)
のように使うことができるんです。
でも一つ気をつけなければならないことが!
「今,まさに迷っている」場合は,“I am lost.”のようにBe動詞を用いて表現できるのですが,
「迷わないでね!」と言う場合は,
“Don’t be lost!”
とは言うことができません。
ですので,「迷わないでね。」は,
“Don’t get lost.”
と覚えておきましょうね。
―“get lost in”は…―
冒頭でお話したデビー・ギブソンの曲, “Lost in Your Eyes”の最初の歌詞,
“I get lost in your eyes.”
直訳すると,「あなたの瞳の中で迷子になる」ですが,
辞書で調べてみると,
「〜に夢中になる」「〜にはまる」
という意味が載っています。
つい,
「あー,いろんな意味があって覚えるのが大変!」
と思ってしまいがちですよね。
でも, “get lost”が「道に迷う・迷子になる」という意味を考えれば,
“I get lost in your eyes.”も,
「あなたの瞳の中で迷子になる」=「あなたに見惚れる」=「あなたに夢中になる」
って考えられると思いません?
そう考えると,ちょっと覚えやすくなる気がしませんか?
そして,こんなにたくさんの日本語表現も知っているのだから,大丈夫。
学習を続けることでわかるようになりますよ。
さあ,2023年も,楽しく(できるだけ簡単に(笑))学習していきましょう!
それではまた来週〜。
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。