私,仕事をしていると思うことがあるんです。
最近,日本語で話しているのに「英単語」を使うことって多くなってきた気がするんです。
いわゆるカタカナ英語なのですが,
エビデンス,リスクヘッジ,コンセンサス,コンプライアンスにリテラシー…
このように,日本語の会話の中に,たくさんのカタカナ英語がでてきます。
新入社員ともなると,業務を覚えると同時にそんなカタカナ英語も覚えなくちゃいけないんですよね。
でも,これによる「弊害」もあると思うんです。
たとえば「◯◯マター」として使われている “matter” という英語。
意味を取り違えると,大きな誤解が生じることもあるんです。
それはどんなことだと思いますか。
―意味を知って使おう―
私たちが普段使う日本語には,多くのカタカナ英語が潜んでいます。
ある調べでは,名詞の10%はカタカナ英語なんだとか。
とくにビジネスにおいては,多くのカタカナ英語が使われています。
ラジオから始まり,テレビ,インターネット等,世界の情報が簡単に手に入るようになってくればくるほど,こういうカタカナ英語も普及してくるのかもしれません。
でも,それらの意味をちゃんと理解しておかないとトンチンカンな解釈になってしまう可能性もあると思うんです。
例えば “matter”。
よく「◯◯さんマター」のようにビジネスでは使われます。
これは,
「◯◯さん案件」や「◯◯問題」
のように使われることが多いと思うのですが,
“matter”=(案件,問題)
とだけ覚えてしまっていると,ちょっとした間違った解釈になることもあるんです。
数年前に大問題となった
“BLM”を覚えていらっしゃいますでしょうか。
人種差別反対運動のスローガンである
“Black Lives Matter / ブラック・ライヴズ・マター”です。
この内容はとても重要でセンシティブなので,今回はこの英語表現のみにフォーカスしてお話しさせてくださいね。
この “black”は黒人の人々のことで “lives”は “life”という名詞 の複数形です。
そして問題は “matter”。
先ほどのビジネスカタカナ英語では,「◯◯さん案件」や「◯◯問題」のように訳されていました。
たしかに “matter”の名詞にはそのような意味があります。
だからこれを「黒人の命の問題」と訳す人がいるんです。
しかしこの “Black Lives Matter”,実は文章なんです。
“Black Lives”が主語で,「黒人の人々の命」,そして “matter”は「重要,大切である」という動詞なんですね。
つまり
“Black lives matter.”
(黒人の人々の命は大切です)
という文章なのです。
英語での「文章」とはどんな定義なのか,ちょっと考えながら次を読んでくださいね。
―What Would Kids Do?―
『“What Would You Do? / WWYD”』
(あなたはどうする?)
というアメリカの社会実験型のリアリティ番組があります。
日常の中で起こり得る「道徳的な問題」を隠しカメラで撮影し,その場にいる一般の人々がどのような行動をするかを見る番組です。
先日この 『“What Would You Do? / WWYD”』の中で,子どもを対象とした
“What Would Kids Do?”
(子どもはどう行動する?)
というのがありました。
「[いじめ]を目撃したら,自分の子どもはどうするか?」
というテーマだったのですが,子どもたちの大人さにびっくり。
いずれの子どもたちも,いじめっ子を相手にはっきりとNoを突きつけ,今初めてあった子を助けるのです。
そして,最後は番組の司会者が出てきて本人にインタビューをします。
司会者が,
“Why is bullying such a bad thing?”
(なぜいじめは悪いことだと思う?)
と少年に質問をするのですが,その質問に対して少年は,
“Because words matter.”
と答えます。
直訳すると
「言葉は重要だ」
です。
この場合は
「言葉は重要だ=言葉には力がある」
と,言う意味で
「言葉一つで人を傷つけることも助けることもできる」
というニュアンスを含んだ重い言葉であると,私は解釈しました。
そのシーンはちょうど05:00のところから始まります。
“matter” を「案件や問題」とだけ覚えていると,このような場合,違った意味で解釈してしまうかもしれません。
もしも今後,このような “matter”に出会って「重要である」なのか「案件,問題」なのか迷ってしまったら,
・動詞か名詞かを考える
⇩
:動詞=重要(大切)である
:名詞=案件,問題
を思い出し,
「動詞として使われているのか,名詞として使われているのか」
を考えてみましょう。
ここでちょっと文法的なお話をすると,
英語は基本的に「主語(S)+動詞(V)」があって初めて「文章」となります。
学生の頃,
SV(第一文型)
SVC(第二文型)
と学習したのを覚えている人も多いと思います。
少年の言った “Words matter.”(言葉は重要だ)であれば,
“Words”=主語(S), “matter”=動詞(V)で,SVという文章が成り立ちます。
でも,もし “matter” を名詞と捉えてしまったら,
“Words”=主語(S), “matter”=名詞(N)
となり,
「言葉」「問題」のように単語を羅列しただけになり,文章にはなりません。
2つの言葉だけを並べても意味が通じませんものね。
そのように考えるクセをつけておくと,
「あ,この意味のほうがしっくりくる!」
と思えるようになると思います。
その感覚が大切なんですね。
さて,今回ご紹介した
“What Would Kids Do?”,
12分弱の動画ですがぜひご覧になってみてください。
英語が難しいと感じた場合は,YouTubeの機能で字幕翻訳を見てから,英語で見るようにするといいですよ。
(歯車マーク→字幕→自動翻訳→日本語を選択すると字幕翻訳がでます)
きっと,英語の勉強ともう一つ,心に清々しい何かが生まれてくると思います。
ということで,英語の勉強がんばりましょう〜!
See you next week〜♪
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。