みなさんは、長年、勘違いしていた言葉ってありますか?
私はあります。
自分が中学生くらいの頃、友人と自転車である公共施設の前を通った時のこと。
友人がこう言いました。
友:「この施設で汚職事件があったんだって。」
私:「へぇ、ここにレストランがあったなんて知らなかったよ。今はもうないの?」
友:「何の話よ?なんでレストランよ?(笑)」
私:「お食事券があったんでしょ?」
今ではありがちな笑い話ですみますが、当時の自分は、自分の無知にかなり恥ずかしくなったのを覚えています。
その後、アメリカへ引っ越してからもこんなことが。
まだ英語をそれほど理解できなかったその頃の私。
そんな時に、ホームステイ先の親戚が訪ねてきました。
みんなで食事をした後、おしゃべりをしていると、お母さんが子どもに対して、
“You wanna go パーリー?”
私は内心、「え?いきなり?」「しかもパーティーに行くの?」と思ったのです。
でもやっぱり変だよな…状況的に。と考えて、
“What does パーリー mean?”(パーリーってなんて意味?)
と聞いてみました。
「トイレよ。おしっこに行きたいか聞いたの。」とお母さん。
“Wow, that’s interesting.”(わあ、それは興味深いね。)
と答えた私。
それからその言葉に接する機会があまりなく
ずっとトイレのことを「パーティー」というのだと思っていました。
それから数年後、また同じような機会があって初めてその事実を知ったのです。
“party”ではなく、 “potty”であったと。
長年信じていた私(というか接する機会が全くなかったのですが)には衝撃的でした(笑)
“potty”は、もともと「オマル」のことで、「トイレ」という意味で使うようになった幼児語なのだそう。
当時はまだ、[ar]・[a]を区別できるほどの耳もなく、完全に「パーリー」と思っていた私。
イギリス英語であれば、「ポッティ」のような[o]の発音となるので間違えることはなかったと思うのですが、アメリカ英語だったせいかずっと勘違いしておりました。
だって、
「ほう、パーティー=トイレか。なかなか粋な表現をするものだな。」
と関心さえしていたくらいなのですから。
あの時質問したお母さんも、
「この日本人、トイレが興味深いのかしら?トイレ好き?」って思ったことでしょう。
(また出た、Cozyのトイレ話…)
この勘違い話を思い出したのには理由があるのです。
それは、コロナ禍で旅行もなかなかできない今、
「新型コロナウィルスが落ち着いたら、こんな温泉旅館に行きたいな。」
「ああ、ここもいいな。」
と、ネットで仮想旅行をしていました。
ある高級感溢れる旅館が目に止まったのですが、そこには
“天然露天風呂付きのSweet Room”という書き込みが…。
「ん?Sweet Room?」
お気づきの方も多いかと思いますが、本来は「Suite room(スイートルーム)」です。
高級感のある部屋で、甘~くゆったりとリラックスできるというイメージからか、
「Sweet room(スウィートルーム) と思っている人も多いのだとか。
もしかすると、新婚旅行専用の部屋だと思っている人だっているかも知れません。
わっ、甘いですねぇ。
でも、”sweet”ではなく、”suite”です!
ホテルや旅館などでは、ワンランク上の部屋を指すことも多く、その意味は「寝室、パーラールームと呼ばれるリビングルーム、ダイニングルームなど、複数の部屋があるタイプのことをスイートルームと言います。
さらに、英語で表す時は要注意です!
英語でスイートルームを表すときは、“Suite”だけで良いのです。
“room”はいりません。
“I’d like a suite.”(スイートルームをお願いします。)
これだけでいいのですね。
ここまで「スイート」と言って来ましたが、実は発音は同じなのです。
sweet [swíːt]
suite [swíːt]
「じゃあ、スウィートルームでいいじゃん。」ってなりますよね。
そうなんです。
本来は「スウィート」と表記していいのです。
が、日本ではどうしても「スウィート」= “sweet”と思ってしまいがち。
そう言えば、昔大好きだったバンドの歌に「Home Sweet Home(やっぱり我が家が一番だ。)」というのがあります。
“sweet”には、「甘い」というだけではなく、「素敵な、やさしい、最高の、いいね」などという意味もあるんですね。
そして“suite”には、「ひと続きの部屋、一組の、一式の」などという意味があります。
部屋の “suite”は、 “sweet”との意味を区別するために日本では「スイート」と書かれるのですね。
簡単な言葉でも、やっぱり奥が深いですね。
さて、“sweet”繋がりで、私のアメリカでの恥ずかしい失敗談を。
ある日、友人と遊びに行く約束をしていた私は、友人の家に車で迎えに行きました。
ちょうどハロウィンの時期で、友人の家にはお母さんが作ったクッキーなどがテーブルの上にあり、ちょっとつまんで食べたり、お母さんや友人の妹とおしゃべりをしたりして友人を待っていました。
「さあ、出かけよう」という時に、友人のお母さんが
“Why don’t you take these oranges? They are so sweet.”
(このオレンジ持っていったら?すごく甘いよ。)
と言ってくれました。
でも私は、“Oh, no thank you.”
と断ってしまったのです。
すると友人は、 “Why not? You don’t like oranges?”(なんで?オレンジ嫌いなの?)
と聞いてきたので、
“I do, but I don’t like sour ones.” (好きだけど、酸っぱいのは嫌いだよ。)
そこでみんなは
「???」
お母さんは、 “So sweet”(すごい甘い)と言ったんですよね。
ですが、私の脳には、「So “すぃ~”。」と入ってきたのです。
「すぃ~。」
実はこれ、山口の方言。(山口県だけじゃないかもしれませんが)
私の出身地では、酸っぱいことを「酸いい(すいい)」ということがあります。
(おじさんを中心にかも(笑))
私の脳には、 “sweet”という言葉が、まさか山口の言葉に変換されていたのです。
しかも超自然に。
それを説明すると、お母さんは
「日本語もできない私が、山口の言葉を話すわけないでしょ!」って。
そりゃそうです。
でも、本当に自然にそう頭に入ってきました(笑)
さて、冒頭のトイレを表す “potty”と “party”。
「そんな間違いをしている人はいないのかな? いやいるでしょ?」と思って調べてみると
子ども向け番組の歌にありました!
“I’m going to a party.♪I’m going to the potty.♪”という動画が!
フフフ…。やっぱり似ているのですね。
ご興味ある方はお調べくださいませ~。
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。