「太ったんじゃない?」
10年以上前ですが,会社のエレベーターホールで久しぶりに会った当時の上司から言われた言葉です。
日本では,よく「ちょっと太ったんじゃない?」とか,
「顔が小さ~い」とか,
人の外見を見てそれを言葉にする人が結構多いと思いませんか?
「え?それって普通じゃない?」
本当にそう思います?
世界的に見れば,それは普通ではありません。
特にアメリカでは,まずあり得ないこと。
海外で生活したことのある人が一様に口を揃えて言うことがあります。
それは,
「日本という自分の国を,客観的に見ることができるようになった。」ということ。
日本にいると気付かなかった自分の国の習慣など,良いことも悪いこともよく見えてきます。
その中でどうしても首を傾げてしまうことがあるのです。
それは,冒頭でもお話した通り「人の容姿に対して何かを言う」ということ。
言っている方は特に悪気はないのかもしれませんが,「ハゲたんじゃない?」なんて言われて
「え,超嬉しい!」と思う人はいません。
また,着ている服などにも口を出す人もいます。
「ちょっと派手じゃない?」とか。
親しいからこそ他の人がどう思うかを言ってくれるのかもしれませんし,
親しみを込めていじってくるのかもしれません。
でも正直,余計なお世話だと思いません?(笑)
中身を大切にするアメリカ人
アメリカで生活をしていると,「自分が人からどう見られているか」を日本にいる時ほどは気にしなくなる気がします。
自分が着たい服を着ればいいし,自分のしたい髪型にすればいい。
それに対して, “ I like your shirt.(あなたのシャツいいね。)のように褒める人はいても
「それ変なシャツだね。」のように否定する人はほとんどいません。
それはどうしてなのでしょうか。
それは,「個人の個性だし,自由」だから。
その人がハゲていようが,顔にシワがあろうがそれはその人自身。
人がとやかく言うことではない,というのが基本的にあるから。
中には,意地悪な気持ちを顕にして言う人もいますが,それは本当に意地悪な人。
普通のアメリカ人は,人の容姿に対していちいち言いません。
アメリカでは外見よりも「人間性」を重視という考えが日本よりも高い傾向にあります。
だからといって,全く外見を気にしないというわけではありません。
太ったと思えばジムでワークアウトするし,オシャレだってする。
それは自分がしたいからだし,自分のためでもあるから。
「普通」って何?
日本人は,肌,髪,目の色はほとんど変わらないと思っている人が多いと思います。
本当はみんなひとりひとり違うのですが,ほとんど「同じ」,これが普通だと思っています。
ですので,ちょっと特徴があると「いじる」人が出てくるのかもしれません。
例えば,背の低い人を「ちび」と呼びからかう。
いわゆる平均的な身長よりも低い人のことです。
ここで言う平均とは,「一般的」ということ。
「一般的=普通」と考えてしまっているが故に,ちょっとそこから外れた人をからかったり,いじったりするのです。
頭髪が薄い人に対してもそう。
「ハゲ」と言って笑いのネタにする。
日本人の普通は頭髪があること。
なので,頭髪が薄かったりなかったりする人のことをいじるのです。
しかし多くのアメリカ人は,人の容姿や身体的なことをからかうことは「自分の品格のなさ」を表すことと考えています。
だから,自分の価値を自ら下げるような言動や行動はとらないのです。
そもそもアメリカは人種の坩堝。
黒人,白人,アジア系,ヒスパニック系…と様々な人々が住んでいます。
髪の色も違えば,肌の色も目の色も違う。
それが当たり前。
日本のように,髪の色は黒が普通,ではないのです。
子どもの頃からしっかりと教育される
例えばまだ幼い小学生が学校でお友達と喧嘩して,何か悪口を言ったとします。
もしも先生や大人がその発言を聞いた場合は,すぐに注意しますし,場合によっては校長室で校長先生から指導されます。
普通の家庭であれば,親もしっかりと子どもに「してはいけないこと」「言ってはいけないこと」を教育します。
たまに街中でも,子どもを叱っている親御さんを見かけることがあります。
そんな時,一般的なアメリカの親はしっかりと子どもの目を見て,
「いい?そういう事を言って誰が喜ぶの?
あなたが言われたらどんな気持ちになる?
それを今あなたは言ったんだよ。
どうしたらいい?」
のように,感情的ではなく淡々と子どもに言って聞かせるのです。
顔が小さいは褒め言葉?
ネットやテレビを見ていると,やたらと「ダイエット」「若々しさ」「育毛」など,見た目を煽るようなCMが流れています。
テレビの番組などでも,「小顔効果!」とすると反応が良いそう。
街中で芸能人を見た人が,「顔小さ~い!」と喜んで言っているのを聞いたことがありますが,
顔が小さい=かわいい,カッコいい
この公式,アメリカでは通用しないんです。
もしもあなたにアメリカ人の友人がいて, “Oh, your face is so small, so cute!”(まあ,あなたの顔小さくてかわいい!)と言ったとします。
さて,相手はどんな反応をすると思いますか?
ほとんどの人は,
“I don’t get what you mean.(あなたの言っている意味がわからない)”となると思います。
それどころか,怒り出す人もいるかも知れません。
顔が小さい=脳みそが小さい=頭が悪い
と捉えられ,「バカにしているの?」と受け取ってしまう人もいるのです。
日本人からしてみれば,「顔が小さい=褒め言葉」のつもりなのですが,
アメリカでは通用しないのです。
だからやっぱり,人の容姿には触れることは自分の品格を落とすことになるのです。
みんなちがって,みんないい
今はもう令和。
グローバル社会とか国際化とか,声高に叫ばれて久しいですが,ついつい語学力に目がいきがちです。
しかし本当に国際化を目指すのであれば, 日本人の「普通」という概念も違うんだ,ということも学ぶ必要があるのではないでしょうか。
日本人の普通は,みんなと同じ平均的という意味。
でも,アメリカの普通は,「みんな違う」ということ。
金子みすゞの詩にあるように,
「鈴と,小鳥と,それから私,
みんなちがって,みんないい。」
誰も傷つけることなく,それぞれの違いを自然に認め合える,それが日本の「普通」になりますように。
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。