パンデミックが世界中に残した傷跡は、経済的にもそれはそれはひどいものです。ニューヨークは1年間以上のロックダウンにより、医療・福祉や保育、運輸・物流、小売業、公共機関などのエッセンシャルな職業以外、多くのことが機能しませんでした。
観光に訪れる人々にとっての憧れ、ニューヨーカーにとっても、かけがえのないエンターテイメントである、ブロードウェイのミュージカルやオペラ、ジャズクラブ、美術館や博物館、そしてあらゆるブティックやデパートなど、全てクローズ。
レストランも、しばらくの間、出前のみ許可。エッセンシャルな職業以外の人々の働き方は、リモートワークとなりました。
そんな厳しい状況の中、ひとつ、
私たちニューヨークに住む、日本人にとって、稀有なコロナ効果があります☆
それは、
「マスク」が、これだけアメリカでもポピュラーになったことです。
マスクと言えば、日本では、インフルエンザの時期など、普通に屋外で多くの人々が着用していますが、アメリカでは、コロナ以前には、全く利用されていないものでした。たまに日本からの観光客がしていたりすると、アメリカ人は、伝染病患者とでも思うらしく、よけて通ったりしているのを見た覚えがあります。
病気予防についての考え方が、日本人はとても繊細ですが、おおらかなアメリカ人は、日本人ほどでは無いようです。
なぜ、通常アメリカ人はマスクをしないか
アメリカでは、マスクは、人と接する時にとても大事な、「白い歯を見せるスマイル」を妨げるもの。それは、見た感じがお互いぜんぜん違うアメリカ人たちの中で、お互いに「悪意がない」と言うことをはっきりと示す、大事な社交上のマナー。
ですから、銀行強盗を始めとする、泥棒や殺人などの時に、マスクは多く利用されてきました。アメリカでは、マスクをすると言う事は、顔を隠す必要がある、つまり、「悪意が無い」という意思表示をする必要が無い、と言う意味にもなるわけです。
日本と西洋と、口元に対する捉え方の違い
西洋風の女性のメイクアップでは、真っ赤な口紅などで口元を美しく強調して、その白い歯のスマイルを生かすわけですね。日本人の、女性はうつむき加減で、ましてや大和撫子はおちょぼ口が美しいとされていた歴史から見ると、まるで逆です。だって日本人の場合、目は口ほどにものを言い、ですものね。
日本では江戸時代には、既婚女性はお歯黒と言って歯を黒く染め、他の男性に気に入られないように、笑顔が醜くなるようにしたとさえ言われています。誠に日本の文化は、西洋とは相反するものなのでしょう。
また、日本国民は温厚であり、他の人を尊ぶので、その空間を大事にし、ちょっと離れて、お辞儀をするのだと思います。普通の日本人が、西洋人から、いきなりのハグやほっぺたへのキスを受ければ、驚いて引きますよねぇ。多分、日本人の個人個人が持っている空間へ、ずけずけと入ってくる感じがするのではないかと思います。これも、まさに文化の違いですね。
現在のNYマスク事情
2021年の12月も半ばにさしかかりました。ニューヨークでは、美術館、博物館、お店や病院など公共の屋内や、地下鉄やバス、公共の交通機関では、いまだにマスクが必須です。飲食店でも、従業員はマスク着用、お客さんもトイレなどに立つ時はマスク着用が原則。私の通っていた歯医者さんでは、歯科医と歯科助手は、いつもマスク、アイプロテクターと共にフェイス・シールドを欠かしません。
マスクであったか
だんだん冬になってくると、最高気温でさえ、零下の日が続くニューヨークですから、息を吸うと鼻の中が凍ってしまいそうな時があります。そんな時、マスクがあれば、百人力です。マスクをしてると、ほっぺたや鼻も暖かくて。
嬉しいなぁ、好きなだけマスクをつけていられる今年の冬のニューヨーク。
それでは皆さま、また来週。
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。