「中学,高校と6年間も英語を勉強してきたのに話せないの?」
このようなことを聞いたことはありませんか?
多くの人は,中学の3年間と高校の3年間の計6年間,英語を勉強してきたと思います。
でもその間に,「話せる英語」を身に付けた人はそう多くはありません。
これはヨーロッパなど海外の人からすると,とっても不思議なことなのだそう。
でも私たち日本人からすると,不思議でもなんでもありません。
だって基本的に日本の英語教育は
“study(勉強する)”なんですもの。
あなたはこれ,どういう意味だかわかりますか?
―“study” と “learn”の違い―
「私は英語を勉強しました。」を英語に訳してみてください。
・・・
・・・
“I studied English.”
もしくは,
“I learned English.”
このような英文を作りませんでしたか?
この2つの文章の違いは “study (過去形studied)” と “learn (learned)”だけ。
中学校の検定教科書で “study” と “learn”の意味を調べてみると,
“study”=勉強する
“learn”=学ぶ,習う
のように記載されています。
日本語で考えると,
「英語を勉強した」
「英語を習った」
「英語を学んだ」
はいずれもそれほど違いがないように感じます。
でも英語では,この2つの文章はニュアンスが大きく異るのです。
英英辞典でそれぞれを見てみると,
“study”:
To devote time and attention to acquiring knowledge on (an academic subject), especially by means of books:
(学問に関する)知識を得るために,特に書物などによって時間や注意を注ぐこと。
とあります。
この意味,よく頭に入れておいてくださいね。
対して,
“learn”
To gain or acquire knowledge of or skill in (something) by study, experience, or being taught:
(勉強や経験,または教わることによって何かの知識や技術を得る,または身につけること)
さて,もう違いに気づかれた方もいらっしゃると思います。
そうなんです!
“study”は,基本的に「勉強するという[行為]」にフォーカスを当てているニュアンスなのです。
ですので,その「勉強した内容」が身についているかは関係ないんですね。
本や教材などで勉強したり,学校などで授業を受けたり。
その行為が “study”なのです。
対して, “learn”は,勉強した結果
「習得している」「身に付いている」
というニュアンスが含まれており,本や教材などに限らず
実践したり,経験したりして得るというようなイメージなのです。
―違いを “learn”して知識を増やそう―
よくこう言われることがあります。
“I want to study English.”
(私は英語を勉強したい。)
もちろん,その方が言わんとしていることはわかります。
でもイメージとしては,
(ほうほう,勉強したいのね。頑張ってくださいね。)
という感じです。
でも,もちろんその意図は通じています。
通じていますが,きっとこの発言をされた方は,
「英語を話せるようになりたい!」という気持ちだと思うので,
本来であれば,
“I want to learn English.”
が適しています。
今後のために,この違いを知識として “learn”しておくとgood ですね。(ル―○柴さんかっ!?)
さて,今週の妄想タイム(イメトレタイム)です!
次の “how to ~(〜の仕方)”を使った例文で, “study” と”learn”のニュアンスをイメージしながら読んでみましょう。
“study”は「勉強する行為・過程」, “learn”は「実践で身につける」ようなイメージで読んでくださいね。
きっと, “study” と “learn”の違いがなんとなく掴めて来ると思いますよ。
「英語の話し方を学びたい」
A) “I want to learn how to speak English.”
B) “I want to study how to speak English.”
A. の方は,「英語の話し方を(実践で)習得したい」という意味合いに対して,
B. は,机で,本や教材などで「英語の話し方」を読んでいる感じ。
が想像できましたでしょうか?
まだという方は,こちらも。
「テニスの仕方を学びたい」
A) I want to learn how to play tennis.
B) I want to study how to play tennis.
A. は,「体を使ってテニスを練習したい」というイメージ。
B. は,教本などでテニスについて勉強しているイメージ。
が見えてきましたか?
では最後にもうひとつ。
「料理の仕方を学びたい」
A) I want to learn how to cook.
B) I want to study how to cook.
もう言わなくてもおわかりですよね。
A. は,「実際に料理をして習得したい」という感じ。
B. は,「料理とはどういうものか」等を学習したい感じ。です。
それでもまだニュアンスが掴めないという方は,上記を繰り返し練習しましょうね。
“study”には,「研究・研究する」という意味もあります。
こう考えると,ちょっとはニュアンスがつかめる気がしませんか?
―そう言われれば―
以前,とある国立大学の教授たちと教材制作をしていたことがあります。
その打ち合わせの際に,ある教授がこうおっしゃいました。
「今の日本の英語教育は,[言語学者]を育てているようなものだ」と。
たしかに,「この部分が主節であり,さらに従属節が続きこの従属節の中にさらに従属節が・・・」のような授業も多々あります。
私自身もこのような文法の授業もやっていました。
でも,これをいくら続けても英語を話せるようにはならないのです。
まさに, “study”です。
さあ,あなたは次のどちらの質問に “Yes, I do.”と答えますか?
“Do you want to study English?”
OR
“Do you want to learn English?”
それでは,また来週〜!
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。