私がまだ英語の先生をしていた頃,
よくこんな風に声をかけられました。
“Teacher!”
「先生!」
と呼んでいるつもりだと思うのですが,
これ,英語ではそう呼ばないんです。
しかも,「◯◯先生」のことも
“Teacher ◯◯”
とも言わないんです。
あなたはどう呼ぶか,わかりますか?
― “teacher”の違和感?―
“What do you do for a living?”
(あなたのお仕事は何ですか。)
と聞かれれば,
“I’m a teacher, an English teacher.”
(私は先生,英語の教師です。)
のように答えることができます。
でも,
「先生!」
と呼ぶときは“Teacher!”とは言わないのです。
それはなぜか。
先程の会話例のように “teacher”とは
「職業」を表している言葉だからなんです。
日本で英語教師をしている英語ネイティブたちが
「“teacher”と呼ばれると違和感がある」
と言っているのを聞いたことがあります。
私たち日本人にわかりやすく例えると,
小説家をしている人に対して,
「ちょっとすみません,小説家」
と呼びかけるとちょっと違和感あるじゃないですか。
そんな感じなのかもしれませんね。
―先生を呼ぶときは―
「アメリカでは,先生に対してもファーストネーム(下の名前)で呼ぶのが一般的です」
と。
日本でのこの情報を見たとき,私は
「マジかっ!!」
と声に出してしまいました。
というのも私自身,学生の頃,先生のことをファーストネームで呼んだことがなかったからなんです。
腑に落ちなかった私は,早速調べてみることに。
そしたら,やっぱりあるじゃないですか。
検索してみると,
“Calling teachers by their first name”
(先生を下の名前で呼ぶ)
として,多くの動画があがっていました。
もちろんイタズラや悪ふざけはよくありませんが,今回は
「実際を知る」,ということで紹介いたします。
中には,先生たちと協力して「あ,これはやらせだな」というのも結構ありましたが
最後の校長先生のお話がわかりやすかったので,こちらを。
(ショートなので数十秒です)
最初の先生は,すぐに
“Get out of my classroom.”
(私の教室から出ていきなさい。)
そして,次の先生は怪訝な顔で
“Excuse me?”
(何だって?)
次の先生にいたっては,
“Don’t call me by my first name. Give me that phone.”
(私をファーストネームで呼ぶな。その電話をよこしなさい。)
と怒っています。
その後も,ちょっとフレンドリーに応える先生もいましたが,
多くはやはり怪訝な表情を浮かべます。
最後に,校長先生らしき人が,
It’s not very nice to be calling teachers by their first name.
(先生を下の名前で呼ぶのはよくありません。)
It’s very disrespectful.
(とても失礼なことです。)
They’ve been working very hard and diligent for each one of you…, so going forward…
(彼らはあなた方一人一人のためにとても懸命に真面目に働いてくれています…これからも..)
I need you to please be courteous, be respectful for our teachers and our staff.
(どうか礼儀正しく,先生やスタッフに敬意を払ってほしい。)
And not to be calling them by their first name.
(そして,彼らを下の名前で呼ばないようにしてください。)
そうなんです。
学校の先生のことを通常は,
「Mr. / Ms. + 苗字」
で呼ぶんです。
先生の中には,自分のファーストネームを公表していない人も多くいるほど。
「アメリカはフレンドリー」と思いがちですが,
わきまえるところはやっぱりきちんとしているんですね。
―「ヤラセ」じゃないの?―
校長先生が真剣に諭し,最後に
And not to be calling them by their first name.
(そして,彼らを下の名前で呼ばないようにしてください。)
と言ったところで,この学生は
Okay, Chris.
(わかりました,クリス)
と言うんです。
そして先生が
“Seriously.”
(真剣に)
と言ったところで終わります。
これが「ヤラセ」なのかどうかはわかりません。
校長先生と話をしているときにも録画をしていることから,動画はもしかすると
「校長先生と一緒に啓蒙としてつくられたもの」
なのかもしれません。
でも一つ言えることは,やっぱり通常は
「先生を下の名前で呼ばない」
ということ。
他の生徒が先生に対して
“disrespectful”(失礼な)言動をしないように,の動画なのかもしれませんね。
―ファーストネームで呼ぶこともある?―
「ファーストネームで呼んでいたよ」
「下の名前で呼んでもいいよ,って言われた。
一般的に,先生を
「Mr. / Ms. 苗字」で呼ぶのは,
小学校,中学校,高校の先生たちに対して。
大学は
“Professor 苗字”
“Dr. 苗字”
で呼びます。
が,私のアメリカ人の友人曰く,
幼稚園などではファーストネームで呼んだり,「Mr. / Ms. +ファーストネーム」で呼んだりすることもある,と。
また,英会話教室や語学学校の先生に対してはファーストネームで呼ぶ方が多いと思います。
昔,友人が私のことを“Mr. Cozy.”と呼んだときに,私のホストマザーが笑ったことがありました。
それってもしかして,「幼稚園の先生と生徒みたい」って思われたのですかね?(笑)
学校での先生の呼び方の基本はやっぱり “Mr. / Ms. 苗字”。
間違っても日本的に
“Teacher ◯◯.”
のようには呼ばないでくださいね。
ということで,また来週〜♪
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。