ニューヨークのアパートのエレベーター
ここでは、見知らぬ人でもエレベーターの中でいろんな会話があります。ニコニコさせられることがほとんど。長年の間に、私も少しずつ、アメリカンになってきました。
今回は、そんなエレベーターの中での印象的だった出来事を、いくつか紹介させて頂きます。
ある朝会った若者は・・・
「そのソックス、クールだね。」ある朝のエレベーターの中、190cmはゆうにある、バスケの選手のようなハンサムな黒人の若者に言われた。現在はコロナ禍のため、1台のエレベーターには、3人までの制限あり。
クールと言うのは、若者が使うときは、「かっこいいね」っていう感じ。なんと、ユニクロの、5本指ソックスを履いて、宅配便を受け取りに、サンダルでエレベーターに乗っていた私。なんだかTVの、コメディーショーのオチのよう。
夏に、いちど歯科医のオフィスで、わー、5本の指がみんなソックス履いてるって、見てみてみんな見てって言われ、一躍歯医者さんで有名になったことがあったっけ、、、
そういえば、このアパートに10年以上住んでる人から聞いた話。その人が引っ越してきてすぐ知り合った、ちょうどその人の、太ももぐらいの背丈の小さな男の子。しばらく会うチャンスがないな、と思っていたら、先日、偶然エレベーターで出会ったのだけれども、引っ越してすぐに会った時とおんなじ顔なのに、身長はエレベーターの天井に届くぐらいあったって。
「そのソックス、クールだね。」と言ってくれた若者はその男の子かもしれない。
よそのウチの子の成長は早い?(笑)
目は口ほどにものをいい
しばらく前からの、日本人のマスク好きは、アメリカでは絶対に流行らないだろうな、と思っていたけれど、見事、その予想は裏切られた。これだけコロナが蔓延して、マスクをしていないと罰金を取られるのであれば、これはもう、するしかない。なので、もちろんエレベーターでもみんなマスク。
アメリカでは、顔を隠すのはフェアでないということで、一般人は、以前は顔を隠したりはしなかった。銀行強盗等はマスクをするだろうけど。
最近テレビに出ている女性ニュースキャスターも、マスク着用が義務だから、目ジカラが強いメイクをする人が多いみたい。真っ赤な口紅を塗る代わりに、目のお化粧に力を入れるのだろう。「目は口ほどにものを言い」は日本人特有のものだと思っていたけれど、コロナ禍で、だんだんと世界共通になってきたみたい。
素敵なヘアカットね
私の髪型が、前下がりの結構アジア人ぽいボブのヘアスタイルだった頃、これはよく言われた。
素敵なヘアカットね、どこのお店?と、そのたびに、私のヘアスタイリストさんの電話番号を書いて渡したりしたものでした。
知らない人同士でも、ホントよく褒めたり、訊いたりする。
床材も売る?
2週間ほど前、ガレージセール? いやガレージではないけれど、「今月末で引っ越すことになったの、今あるもの何でも安く手放すから遊びに来てね」、と言われた。
なんと、フローリングにしていたその床材まで売りたいらしい。私の部屋とその人の部屋は同じ作りだから、そっくり使えるはず、って結構勧められたけど、それを剥がして来て自分で貼るのもなんだか大変そうで、今回は諦めた。
なんでも手放すって、どこまで~、って驚いた。
ワンちゃんの名前が!
ある日、すごいキュートなワンちゃんを連れた方と一緒になった。名前は? 何歳?これはよく私が投げかけるクエスチョン。このアパートはセントラルパークのすぐそばだから、とにかく住人のワンちゃんは多い。そんな中、今までで最高だなと思ったネーミングは、真っ白な、なんていうんだろう、毛の長い体長50センチ位の愛玩犬なんだけど、名前がなんと「おトーフちゃん」。笑った~。アメリカだよ、ここ。
ピザボックスは格好のネタ
コロナ禍前、イタリアンのお店で演奏した帰りに、大きなピザのボックスを持っていることがよくあって、これはもういろいろ言われた。1番多いのが、「わざわざ僕のためにありがとう~!」って。
最初は、キョトンとしてしまったものですが、最近は慣れてきて、「もっちろん、好きなのはペパロニって言ってたわよね~」って、そんなふうに返せるようになりました。
直行エレベーター
いつも、ビルのケアをしてくれている優しい笑顔のおじさん。特別なエレベーターのキーを持っていて、地下の入り口から偶然一緒になった時などは、見ててごらん、と言って1階含め、他の階に止まらないように、私の階まで直行便にしてくれた。
これは、笑った。得意げなおじさんに、最高だよ、ありがとうねって言いながら、ニコニコしながら部屋に到着。
最高な気分を有り難う
ランドリールームから、たくさんの乾かした洗濯物を部屋に持ち帰ろうとしていた時、エレベーターの中で、10歳ぐらいの女の子が「わー、とってもいい匂い。フレッシュなお洗濯の匂いほどいい匂いってないよね」ってにっこり私に微笑んでくれた。英語では、” You made my day! “ と言う表現がありますが、今日1番のヒット、というか、「今日、最高な気分にさせてくれてありがとう!」って言う感じです。
早く以前のように・・・
今はコロナになって、まず、人と触れるのが怖いので、以前より無口になりましたが、思い返すと、ほんの1年前までは、住人同士が普通に仲良く話あえていたのもホントよかったなと思います。早く、そういう昔の生活が戻ってきてほしいと思います。
ではまた来週
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。