海外へ行く際,ある程度の「文化・習慣」を調べてから行くのは当たり前のことですよね。
でも,大抵は「チップのこと」「電車やバスなどの公共機関の利用の仕方」など,
「明らかに日本とは習慣やシステムが違うだろう」と思われる内容についての知識をつけておく方がほとんどではないでしょうか。
人間とは,なかなか「自分の当たり前」に気付きづらいものです。
それが生活習慣ともなれば,「やっちまった…」とならなければ気付かないこともあるのです。
―日本人夫婦を逮捕!?―
私がロサンゼルスに住んでいた頃のこと。
夕方のローカルニュースで,ごく近所のスーパーの駐車場の様子がテレビに映し出されていました。
そして,画面に映ったのは日本人の夫婦。
「なんだ?どうしたの?」と見ていると,
「日本人夫婦を児童虐待の容疑で逮捕」というではないですか。
ご存知の通り,児童虐待には精神的,肉体的,性的,そして育児放棄があります。
「どんな虐待を我が子にしたのだろう…。」と見ていると,それは「児童遺棄」。
こう聞くと,「どんなひどいことをしたのだろう」と思いますよね。
でも,それは日本ではよく見かけることだったのです。
―日本の習慣は世界の非常識!?―
その日本人家族は日本からの旅行者らしく,レンタカーで旅行を楽しんでいたそう。
「ちょっとだけ飲み物を買おう。でも一人では言葉も不安なので夫婦で行ってくるから,子どもたちはちょっと待っててね。」そう思ったらしいのです。
アメリカでは,たとえそれが数分間という短い間だったとしても,子どもたちだけを残して離れるということは禁止されています。
今回は車の中でしたが,それが例え「家の中」であってもダメなのです。
たまたま駐車場で見つけた人が,「子どもが車の中に放置されている。」と通報したのですが,これは通報の義務があるため。
「児童虐待の事実を目撃したり,知ったりした人は警察,または児童施設に通報する義務がある」のです。
―人前で怒鳴って叱るのもNG―
「もう,何やってんの!!」
「何度言ったらわかるんだ!!」
「もう,置いてくよ!」
そうやって街中で子どもを叱る光景を目にしたことはありませんか?
日本では,愛情あって叱っていると思われる光景ですが,アメリカでは「人前で怒鳴る行為」は,「子どもに対する心理的威圧」の虐待とみなされ,通報されることもあるのです。
また,子どもの前での夫婦喧嘩もNG。
精神的虐待とみなされてしまいます。
これらは「そうなんだ…。」と,理解できる人も多いと思います。
でも,日本人からすると「まさか!」というご法度がアメリカにはあるのです。
―日本の習慣が犯罪に!?―
それは「入浴」。
日本では,リラックスしながら一日の疲れを癒やす時間でもあり,子どもと一緒に入ってスキンシップをとったり,今日の出来事をお話したりするコミュニケーションの時間でもあります。
でも,これ,欧米諸国ではとっても非常識なことなのです。
日本では,幼稚園児や小学生の子どもがお父さんやお母さんとお風呂に入るのはよくあることです。
子どもをお風呂に入れるのはお父さんの役割。としている家庭も有ると思います。
でも,アメリカでは親子が一緒にバスタブに浸かることは,基本的にありません。「一緒に入ることを良しとする」という考え方を持つ人もいないわけではありませんが,それでもせいぜい子どもが4歳~5歳くらいになる頃まで。
通常は,このように子どもを入浴させるのが一般的なのです。
バスルームはプライベートな場所と考える欧米。
ですので,例え親子であろうと家族であろうと,一緒に裸になって入浴することは非常識と考えられているのです。
それどころか,性的虐待とみなされ犯罪になってしまうこともあるのです。
「でもそれって,お父さんと女の子の子どもが一緒に入るとアウトってことでしょ?」
いえ,同性でもアウトなのです。
実際に,「ママと一緒にお風呂に入っている」ということを小学校で何気なく話してしまったために,すぐに児童保護施設に保護されてしまったケースも。
その小学生の女の子は,先生から再度,「それは本当なの?」と「事実確認」をされたあと,学校から警察へ通報。
母親は逮捕され,その後,子どもと別々に事情聴取。
「お風呂で何をしたのか」
「水着など着ずに裸だったのか」
「お互いの肌に触れたのか」
など,こと細かに聞かれたそう。
この母親の場合,日本の習慣を理解してもらい釈放されるまで,数日間は勾留されたのです。
このケースは母親と娘だったので,比較的軽く済んだのかもしれません。
これが父親と娘だったら,さらに「性的虐待」として扱われ,いくら「日本の習慣」だと説明しても理解される可能性は低かったかもしれません。
「外務省 海外安全ホームページ」にも,これまで実際にあった同様の事例が紹介されていますので,その国,その国の習慣,特にご法度な情報は頭に入れておきたいものです。
―微笑ましいと思える習慣も,実は日本だけ!?―
日本では,親が子どもと一緒にお風呂に入るのはよくある一般的なこと。
ですが,アジア圏だけではなく世界的にみても日本以外ではあまりないことなのです。
ですので,多くの国ではそれは非常識になってしまう…。
親子のスキンシップ,コミュニケーションの場でもあるお風呂の習慣が,非常識となってしまうなんて,日本人からするとびっくりですよね。
もうひとつ,日本人に多い世界から見ると非常識なこと。
それは,お風呂での写真撮影。
子どもがお風呂に入っているところを「成長の記録」としてカメラにおさめることがありますが,これもご法度。
男児であれ女児であれ,これは「児童ポルノ」の対象として取り締まられてしまう可能性大なのです。
欧米諸国,特にアメリカでは例え「親と子であっても,別人格の個人個人である」という考え方をします。
なので,個々のプライベート,プライバシーを大切にするんですね。
そう考えると,自分の裸は大切なプライバシー。
そこは「むやみに見せるものではない」,そのような考え方が根底にある故なのかもしれません。
もともと「銭湯」など,他人と一緒に風呂に入る文化・習慣のある日本。
だから家族との入浴も自然と根付いていったのでしょうね。
そういえば最近,銭湯がマイブームの私。
湯船に浸かりながら,「知らない人と何気ない会話をするのもいいもんだなぁ。」と感じている私。
「裸の付き合い」という言葉があるように,人とのコミュニケーションを大切にする日本の文化。
銭湯には体験してみないとわからない,この独特な「日本の良さ」。
海外の人に理解してもらうには時間がかかるんだろうなぁ。
しかし,「郷に入っては郷に従え」。
海外では,その土地の文化・習慣を尊重し,楽しい海外ライフをエンジョイしましょうね。
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。