今回は、私がハウスピアニストとして、28年間ピアノを演奏している、イタリアンのお店
「Arturo’s(アルトロ)」
を紹介します。
「ニューヨークの名物料理」などという記事には、必ずのようにトップランクで掲載されている、炭焼きピザ。この炭焼きピザで有名なイタリアンのお店「Arturo’s」は、ニューヨークのダウンタウンのメインエリア、Greenwich Village(グリニッチビレッジ)のど真ん中にあります。
有名なブルーノート・ジャズクラブからも歩いて約5分なので、かつてはよく、世界的ジャズミュージシャンたちが、リハーサルと本番の間に、軽く食べに来たりしてました。
この店は、時は遡ること1957年6月に、オーナーのイタリアンアメリカン夫妻、ミスター&ミセス・ギウンタによってオープン、今年で64周年。代は変わりましたが、いまだに連日満員のお店として、大賑わいです。
私は、このお店に入ってすぐ、真正面にあるグランドピアノで、この四半世紀に渡って、週5日、夕方から自分のバンドで演奏していました。
今はパンデミック直後の過渡期で、あの賑やかな喧騒やオーディエンスの盛り上がりが懐かしく思われますが、ミュージシャンやお店の従業員さんたちのシフトも少しずつ、戻りつつあります。フォトは、演奏中のKayo HIRAKI ピアノトリオ
ここは、学生街で有名な、グリニッジ・ビレッジのど真ん中です。日本の、東京で言うと、各有名大学とかがあるお茶の水とか、高田馬場とか、そんな雰囲気かな。
生徒数約5万人と言われる全米最大規模を誇る都市型大学の、NYU (ニューヨーク大学)の校舎やドミトリー(寮)が、このアルトロの周りあちこちにあり、ワシントン・スクエア・パークからは徒歩5分。
夏にはサマーコンサートもよく開かれますから、ここの焼き立てピザを持ち込んで、楽しむ方法も大人気。
このネオポリタン(ナポリ風)コールオーブン(炭焼き窯)が有名なのですが、イタリア系移民により、20世紀初頭に初めての炭焼き窯がニューヨークに作られて以来、その後法律で新設が禁止されたため、現在残っているのはマンハッタンではたった4軒だけだそう。
そのうちの1軒と言うことで、冬の寒い日などには、ニューヨーカーは「鍋を囲んで」ならぬ「焼きたての炭焼きの熱いピザを」、みんなで食べに来るのがほっかほかになるための定石のよう。零下というのに、屋外に行列ができていることもしばしばです。
ニューヨークの冬は、日本で言うと緯度は青森県ぐらいになるらしく、最高気温でさえ零度以下と言うように冷え込みます。そんな時にはこのオーブンからの、焼き立てホッカホカのピザで温まる、というのが、寒いところに住む人々の知恵なのでしょう。
ここのピザはハーフ&ハーフがオススメ。と言うのも、このピザはなんと直径が16インチ(約50センチ)あるのです。ドラムのシンバルで言うと、1番大きなシンバルの大きさ位です。
1枚オーダーすると、8切れのカットされており、私の感覚だと、2切れずつ、4人でちょうどおなかいっぱい、いい感じですが、アメリカでは、このホールピザ8切れを1人で食べ切る強者もよく見かけられます(笑)。それだけ美味しいってことですよねぇ。で、体型も、大きくなるわけですよね
そしてこのお店は、ピザだけではなく、ほとんどのイタリア料理がメニューにあるのも、大人気の秘密なんです。パスタはもちろん、シーフード、チキン、ヴィール(仔牛肉)、ビーフステーキに至るまで、何でもあります。そんな中から私のオススメをちょっとご紹介。
まずアペタイザー(前菜)、イチオシは、クラムズ・アルトロです。
これは、大きなクラム(蛤)を炭焼きオーブンで焼いたものですが、このクラムにエビなどを細かくチョップしたものが乗っかっており、とっても美味です〜。
それから、フライド・カラマリ(イカフライ)をマリナラソースにつけていただくのとか、あ、マリナラソースとは、イタリア料理のソースの定番で、トマトソースにハーブやスパイスを足して、コクが出るように仕立てたものの事だそうです。
マッスル(ムール貝)のガーリックと白ワイン蒸しとか、これは食べ終えた後のお皿に残ったスープがまたおいしいのです。ガーリック・ブレッドをここに浸して食べると、最高です。ワインがどんどん進みます。
メインですと、私はヴィール・マルサラ・ソースが1番好きです。マルサラはイタリアン白ワインの1種だそうで、そのソースなのですが、イタリアンのお店で、よくチキンやビーフのマルサラ・ソースをメニューに見つけることがありますが、このワインを使ったソースだと、まず外れることがありません。このヴィール・マルサラ・ソースも、とってもお勧めです。
こんな感じで、ピザに限らず、多岐に渡るイタリア料理の数々も楽しめるんです。
とはいえ、やはり一番人気は、ピザ☆
さて、そんなピザを目当てに、ここ「Arturo’s」を訪れたピザ・ラバーな有名人は、引きも切らず。アッと驚くような有名人が、たくさん来てるんです。その様子は、次週お届けしますね♫
それでは、また来週
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。