アメリカでは、チップの制度があり、自分のために何かをしてもらった時、そして、それが嬉しかった時に、感謝の気持ちをキャッシュで、その場で渡します。
これが、その制度をとっていない日本人には、なかなか難しい。どの人に渡せば良いのか、いくらぐらいだと失礼にならないだろうか、不公平にならないだろうか、と。
今回はそんなチップについて、面白かった体験なんかも含めてお話します。
以前私の両親が初めてニューヨークに来た時、私が滞在中のアパートの、ドアマンやエレベーターボーイにまで、いちいちチップを1000円位ずつ渡していました。
両親曰く、「わざわざドアを開けて、荷物を持ってくれるし」「わざわざ僕たちのためにエレベーターに乗って、手動でドアを開閉し、必要な階まで乗せてくれる」と。
確かに、そう聞くとチップが必要な気もしますが、これらは、住人が払っている管理費からちゃんと給料が出ているので、そういう通常の業務にはチップは要らないんです。
なので、チップをもらった彼らは、とても嬉しかったらしく、あなたの両親は本当に素敵な人たちだ!とその後、私が何度言われたことか(笑)
でも、例えば、彼らがものすごく重い荷物が届いていたのを、部屋の階まで運び上げてくれていたとか、具合が悪くなったので急遽、犬の散歩を代わりにちょっとお願いしたとか、棚が壊れて困っていたのを直してくれたとか、そんなときには、お心付けとして、チップを渡します。
そして、1番大事なのは、年末、クリスマスのギフトです。ドアマン、エレベーターボーイ、掃除の人たち、セキュリティ、そして郵便配達人、1人ずつ顔を覚えておいて、かわいいカードとともに、1年分の感謝を込めて、多めのキャッシュを入れて渡すのが、こちらの通例のようです。
はい、ご想像の通り、結構大きな出費となります(笑)。でも、これを忘れない方が、次の1年が心地よく過ごせるみたい。きれいに窓を掃除してくれたり、とか。反対に、クリスマスプレゼントを忘れた家には、来てくれなかったりとか、なかなか、顕著に現れる場合もあるようで(笑)
さて、外で渡すチップと言えば、まずはタクシー(イエローキャブ) のチップ。乗車運賃の10%ぐらいで渡します。最近は、アプリ配車サービスの、ウーバーやリフトがどんどん人気になってきているのですが、それらはチップ込みの金額が、クレジットカード引き落としになるので、いちいちチップなど考えなくて済むので、確かに楽ですね。
そして、外で考えるチップとして、やはり大きいのはレストランでしょうか。まず通常の飲食で支払う金額として、今ニューヨークの相場では、飲食の総額+約9%のタックス+飲食代の20%ほどのチップ。
支払う際の簡単な計算方法としては、もし3000円食べたとしら、税金が約300円、そしてチップが3000円の20%ですから600円、それらを足して、約4000円払い、そこでニューヨーカー得意のセリフ☆
「No change!」
(おつりは取っといて!)
って感じです。
3000円食べたら、支払いが約4000円というニューヨーク。12,000円食べたら、約16,000円支払うというニューヨークであります。ですから、チップ制度のない日本へ戻りますと、レストランがとにかく安く感じられます☆
最近は、コロナ禍でレストランも経営が大変で、コロナ感染防止費(?)みたいな項目で、別途10%ほど上乗せしているお店もあり、賛否両論となっています。
アメリカのレストランやバーで面白いのは、レストランで、ウェイトスタッフが、
「調理場で、間違えて1つ余計に作っちゃったらしいの。これ、とってもおいしいから、食べてみて」
ってアペタイザーを1皿おまけに出してくれたり。
バーテンダーが、
「カクテル多めに作りすぎちゃったから、ちょっと味見してみる?」
って、高級そうなカクテルを、本来の半分近くもの量を普通のコップに入れて、味見させてくれたり、とお客さまの入りが少ない日には、そんなラッキーなこともちょこちょこあります。
つまり、彼らも、チップを稼ぎたいわけなんです(笑)
数年前のニューヨークでは、バーテンダーが、お客さんが3杯飲むと、4杯目は「On the house!」と言ってお店がおごってくれる、バイ・バックという習慣がありました。
3杯目を飲むと目の前に、空のグラスを逆さに置いてくれるんです。これで、この人の次は4杯目(お店のおごり)っていうことが分かります☆
でも、実際3杯も飲んでしまうと、4杯目はじつはもうあんまりいらないのですが、ついつい奢りだと頂いてしまい、酔っ払う羽目になります(大笑)。
そして、こんなときには、大盤振る舞いでチップをはずんだりするんです☆こんなに楽しくさせてくれて、ありがとう(>_<)!!って。
しかしながら、この習慣は、あまりに街に酔っ払いが増えるので、今は法律で禁止となりました。大変に残念なことだと思います(笑)。
最後に!、これは我田引水と思われますと恐縮ですが、ミュージシャンへのチップですね〜(笑)。
聴いて頂いて、なんだかウキウキしたり、すーっと涼しい風を感じたり、気持ちが弾んでココロが熱くなったり、楽しかった!!と思われたときにはどんどんご遠慮なく、恥ずかしがらず、チップジャーを埋めてくださいね〜。
ではまた来週。
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。