あなたは,電車に乗っているとき,
こんな経験をしたことがありませんか?
携帯電話で話している人がいて「迷惑だな」と感じたこと。
誰かがお煎餅を食べ始めて,その匂いが「キツイな」と感じたこと。
今はコロナ禍もあって,電車内でそんなにおしゃべりする人は見かけませんが,
以前は,隣同士に座っておしゃべりするなんて光景はよく目にしました。
それなのに,携帯電話で話されると迷惑と感じてしまう。
お煎餅だって,「臭い」わけではありません。
でもちょっと不快に感じてしまう。
その理由は,
「その行動が,その状況にあっていない」から。
つまり,電車の中は「携帯電話で話す」ことも,「お煎餅を食べる」ことも異質であり,
その状況に合っていないのです。
だから,他の場所では気にならないようなことでも電車の中では気になってしまうんですね。
これ,「日本人の英語」でも,ときに同じようなことがあるのです。
―その英語,ちょっとやめて―
私自信が英語という言語に携わってから,もう随分と年月が経ちます。
その間,多くの日本人が話す英語を聞いてきました。
とても流暢な人,
ちょっとたどたどしいけど頑張っている人,
上手なフリをする人(笑)
この「フリ」が結構やっかいなのです。
英語を少し話せるようになってきた日本人の口から時折聞こえてくるのが
“wanna”
“gonna”
という言葉。
つまり,”want to”(〜したい), “going to”(〜するつもり)を省略して
“wanna” “gonna” なのですが,この省略形を使う人のなんと多いことか。
もちろん,使うことが悪いわけではありませんし,ネイティブも普通に使うこの形。
でスラスラと自分が言いたい英語が口から出る人であればいいのですが,
英語がまだたどたどしい場合は,使うのはちょっと控えた方がよろしいかもしれません。
だって,すごく不自然なんですもの。
例えば,ロサンゼルス在住の知人を訪ねた日本人と,その知人の妄想会話を例にとってみましょう。
A: Is there a particular spot you want to visit in L.A.?
(L.A.で,特にどこか行きたいところはある?)
B: Well…Mmm…, えっとぉ…,I wannaaaa ah… … … … go to … Disneyland.
(えっとぉ,う〜ん…,(えっとぉ…),わたしはぁ… あー… … ディズニーランド… に行きたい。)
のような感じ。
このスペースの雰囲気,わかりますか?
これが問題なんです。
だって, “wanna”って, “want to”を「速く話すことでくっつく」のが基本。
“Oh, yeah. I wanna go to Disneyland! That’s a place I’ve longed to visit.”
(うん,あるよ。ディズニーランドへ行きたい。ずっと行きたかった所なんだ。)
のように,サラッと言えることができれば問題ありません。
それなのに,英語がスラッと口から出すことに慣れていない人が,
その部分「だけ」が変に流暢になって,他はとぎれとぎれ・・・
“ I wanna あー,go shopping.” (買い物にぃーー,ぇーーっと,行きたい。)
そうなってしまうと,ちょっと不自然さを感じてしまうネイティブも多いのです。
「なんでそこだけ “wanna”とか言うの?」って。
これは, “gonna”も同じ。
“wanna” “gonna”を使うと,「ちょっとカッコいいかも?」と思う人もいるようですが,
実際,ネイティブが感じるのは「不自然さ」なので,慣れないうちは
“I want to go to Disneyland.” のように言う方が
「非ネイティブの英語」として自然に受け入れられやすいようですよ。
ちょっと使い方的には違うのですが,以前,こんなことがありました。
日本語はほんのちょっとだけ話すことができるアメリカ人の友人と話していた時のこと。
私たちは英語で話していたのですが,そこに彼にとっては初めて会う人が合流しました。
すると,彼は日本語で,
「オレの…なまえは…○○と申します。」
と言ったのですが,これに私はすごく違和感を感じました。
「オレ」というタイプでもないし,なぜそこだけフランクに言う?」って(笑)
また,別の人ともこのようなことが。
日本語はあいさつ程度しか話せないその人なのですが,
やたらと,
初めて会った人にも,
「ドーモ,Hello!」
「ありがとゴザイマス,Thank you, どうも。」
「ドウモ,ドーモ」
日本語を流暢に話せる人であれば,違和感を感じないのでしょうが,
「それ,ちょっと違う」的な感覚を覚えてしまったのです。
おそらく, “wanna” “gonna”もそんな感じで不自然さを感じるのかもしれませんね。
―どうしても使いたい?―
そうは言っても,「やっぱりちょっと使いたいじゃん?」って人もいるかもしれません。
では,どうしたら良いのか。
それは簡単。
間を開けないことです。
“Do you wanna あー・・・,・・・have some coffee?”
ではなく,
“Do you wanna have some coffee?” と続けましょう。
それでも続かない場合は,
“Do you wanna have … … some coffee?”と,必ず “wanna” などの後の動詞までスルッと言いましょう。
“wanna”は, “want to”だけではなく,
“want a ~”(〜が〈一つ〉欲しい)の場合にも使うことができます。
“Do you want a hamburger?” (ハンバーガー欲しいですか?)
“Do you wanna hamburger?”
のように次には名詞が来ることもあります。
とにかく, “wanna” “gonna”を使いたい場合は,サラッと言えるようにしましょうね。
特に,次にくる動詞や名詞までは,間を開けずに言いましょう。
それだけでも印象は随分と違いますよ。
―でもビジネスでは要注意―
ここまで, “wanna” “gonna”のような省略した形を紹介してきましたが,
なるべく友人同士などで使うようにしましょう。
特にビジネスでは使わないようにしましょうね。
そもそも,
“want” (〜が欲しい)
“want to”(〜したい)
は,割と単純な「欲求」の感じがあるので,
「欲しい」「〜したい!」と結構ストレートなイメージ。
なので,大人はなるべくカジュアルな場で使います。
ビジネスなどで使うと子どもっぽく幼稚に思われてしまうかもしれません。
飲食店などでは,
“I want a glass of water, please.” (水を1杯欲しいです。)
のように言うことはあるにはありますが,それでもやっぱり
“I’d like a glass of water.”の方がスマートです。
だって,「私は水を一杯欲しいな。」とはあまり言いませんよね?
なので,カジュアルではない場では,
“would like”
“would like to”
を使うとbetter。
(モア・ベターよ,は二重比較なのでダメよ〜)
―使い分けの知識を身に付けよう!―
“wanna” も “gonna” も,「使ってはいけない」わけではありませんが,
使う場面や言い方のように,「使い方」があるんだ,ということを知るだけでも大切なこと。
“wanna” は,単なる “want to”の略というわけではありません。
「え,この日本人,なんか不自然な英語話すなぁ。」と思われる前に,
使い分けを習得しておきましょう。
冒頭でお話した電車での携帯電話やお煎餅が不快な理由。
それは,そもそも電車内ですることではない「合っていない状況」だから。
英語をまだあまり流暢に話せないのに, “wanna” “gonna”を使って不自然に感じられるのも
「その人の状況に合っていない」から。
だから,しっかりと知識を習得して練習しておきましょう。
でないと,
“wanna” の「罠」にハマってしまいますよ。
お後がよろしいようで。
では,また来週〜♪
英語教材開発・制作者
米国留学から帰国後、幼児・児童英語教師を経て、中学・高校英語、受験英語、時事英語等多岐にわたる指導を行い英語教師経験を積む。また、ホテル勤務での実践英語経験を積んだり、カナダにて現地の子どもたちの英語教育にも携わりながら、CertTEYL(世界での児童英語講師認定コース)の認定を受ける。さらに、青山学院大学でTutoringの研究員としても活動。英語講師養成のeラーニングコースの日本での立ち上げメンバーとなる。「現場での経験を教材に活かしたい!」と、現在は英語教材開発会社にて日々教材開発に勤しむ。高校入試用のリスニングトレーニング教材(塾・学校向け)は累計10万部以上のベストセラーとなる。英語教材開発の傍ら、全国の英語教師への研修なども行う。また、土堂小学校(広島県尾道市)での英語指導や、初の民間校長として一躍時の人となった藤原校長(当時:杉並区立和田中学校)が手掛けた英語コースの指導に2年間携わるなど、英語教育に関する多様な分野で活躍。大の犬好きから、ホリスティックケア・カウンセラーなどペット関連の様々な資格を取得し、ペットライターとしても活動中。