こんにちは
NYのKayoです。
最近のセントラルパークは、すごい速さのElectric Kick Scooter(電動キックボード)や、Electric Unicycle (電動一輪車)が疾走しているのですが、そんな中、clip-clop (パカ パカ)と優しく響く蹄の音。
ニューヨークを訪れた方なら、一度はあのノスタルジックなHorse Carriage (観光馬車)を目にしたことがあるのではないでしょうか。
160年以上の歴史を持ち、この街の風景の一部だった馬車ですが、今、大きな曲がり角を迎えています。
今日は、ニューヨーカーの間でも複雑な思いが交差している「観光馬車廃止」のニュースについて、少しお話ししますね。
ちなみに、気になるお値段は、馬車1台につき4名まで乗れて、最初の20分が約70ドル(1万円ちょっと)、そして10分ごとに約30ドル(4500円位)が上乗せされていきます。そしてチップは、その約15%から20%が妥当だそうです。
悲しい事故と「ロマンチ法」の動き
実は現在、ニューヨーク市議会では、2028年6月1日までに観光馬車を全面廃止する、という法案の成立に向けた動きが進んでいるのです。
引き金となったのは、今年6月にセントラルパークで起きた悲しい事故。御者が写真撮影のために馬車を離れた隙に、馬が暴走して横転、インドから観光で訪れていた18歳の若者の命が奪われてしまったのです。
この事故を受け、亡くなった18歳の青年の名前を冠した「ロマンチ法案」が提出されました。新規の営業許可発行や更新を段階的にストップし、数年かけて完全に姿を消して行く、という計画です。
歴史と現実の間で揺れる、ふたつの声
このニュースを聞いたとき、私の心もぎゅっと締め付けられるような気がしました。街では今、それぞれの立場からの切実な声が響き合っています。
1.「馬たちを安全な場所へ」動物愛護派の願い
「車も人もあふれるマンハッタンのアスファルトの上で、馬を走らせること自体が不自然で非人道的ではないか」という意見です。夏の照りつける暑さや、排気ガスに囲まれた環境は馬にとって大きなストレスでしょう。
安全と命を守るためには、時代に合わせた変化が必要だという訴えには、深く頷かざるを得ません。
2. 「歴史と暮らしを守りたい」働く人々の叫び
一方で、激しく反発しているのは馬車組合の人々です。約200人いる御者の多くは移民で、この仕事で家族の生活を支えています。「馬たちは我が子のように大切に管理されている。
一つの事故だけで、160年続いた伝統と私たちの生計をすべて奪うのは行き過ぎだ」という主張もまた、ニューヨークという街の真実です。
そして、「もしそうなった時、我々には別の仕事を持つと言うような選択肢があるが、この馬たちの行き先は、既に見えている。」
そう聞いてしまうと、どうも気の毒に思えて仕方ありません。
時代とともに変わっていく街の風景
公園の小道を歩いていると、ふと馬と目が合うことがあります。そのつぶらな瞳を見ると、何とかうまく共存できないかと、切に思います。
伝統を守りたい気持ち、働く人たちの生活、動物たちの福祉、そして何より人々の安全。どれかひとつを切り捨てることが難しいからこそ、今までもこの問題の答えはなかなか出なかったのでしょう。
ニューヨークは、常に新しい価値観を受け入れ、変化し続けてきた街です。実際に現マムダニ・ニューヨーク市長は、選挙キャンペーンの公約にもこの観光馬車の廃止を推進していました。
馬車がいつか思い出の中だけの風景になったとしても、馬たちにも、ここで働く人々にも、温かな未来が用意されることを願ってやみません。
それではまた次回♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。




