こんにちは
NYのKayoです。
ニューヨークに住んで長いのですが、この街の、最近の物価の天井知らずには、本当に毎日のようにため息が出てしまいます。
ちょうど本日7月末日の時点で、ニューヨークの街を二分する一番熱い話題になっているのが、まさにニューヨークの新マムダニ市長が今週正式発表した、市営格安スーパーマーケットの構想をめぐる、大論争。
市が約7,000万ドル(約115億円)を投じて、ニューヨーク市の5つのborough(行政区)に1店舗ずつ市営スーパーを作り、
「お肉や野菜、卵や牛乳といった基本食料品を市場価格より約30%安く販売する」
という計画で、インフレに悩む市民からはめちゃくちゃ大きな期待が寄せられている「はず」なんです、、、
市営格安スーパーの仕組み
この計画では、市が店舗を保有して家賃や固定資産税を全額負担し、さらに運営補助金も支給することで、食料品の大幅な値下げを実現しようとしています。
1世帯あたり年間約1,000ドル (約16万円) つまり毎月約90ドル (約1万5千円) の食費節約になると試算されており、最初にオープンする店舗はブロンクス地区で、2027年末の開店を目指しています。
物価高で毎日のやりくりに苦しむ家庭や高齢者にとっては、まさに待望の救世主のような政策として、受け止められているのです。
地元商店からの激しい反発
しかしその一方で、地元の個人商店や独立系スーパーからは、死活問題だとして悲鳴と怒りの声が爆発。
身近にあるボデガと呼ばれる、コンビニみたいな感じの小規模な食料品店や地元のスーパーは、高額な家賃や人件費をやりくりしながら薄利で必死に営業しているので、そこに税金で家賃がタダになり、補助金まで出る市営店舗が隣にできて、30%安く売られたら、彼ら民間の個人店は太刀打ちできず、廃業や従業員の解雇に追い込まれるに違いない、と強く訴えているんです。
自分たちの納めた税金で、首を絞めてくれるな!と、市に対する訴訟の動きまで出てきています。
ニューヨーカーとしての複雑な思い
毎日の買い物で値上がりに頭を抱える身としては、お安く買えるのはありがたいですが、朝の散歩で笑顔を交わす近所のおじさんの店が潰れてしまうかもしれないと思うと、それも胸が痛みます。
またそのスーパーは各地区に1つですから、このマンハッタンにも1店舗と言うことになり、現在はイーストハーレムに2029年開業予定。
でもマンハッタンは広いですから、もし自分の家から徒歩圏内でなければ、わざわざ電車やバス(片道1回3ドル、約472円) を使ってまで、きっと長蛇の列になるであろう市営スーパーに、頻繁に、卵やミルク・野菜など結構重いそれらの日用品を買いに行くとは実は思えないのも、正直なところです。
つまり、そのスーパーの近所の人だけが得をして、それ以外の人々には何の恩恵も無いんじゃ?というプロジェクトでもあるんです。
現在のニューヨークでは、生活を守るための公共インフラか、それとも民間ビジネスを壊す圧迫行為かというこの熱い議論は、この秋に向けてまだまだ続きそうです。
そんなスーパーを作るのではなく、例えばクーポン券のようなものを作って、収入の少ない人たちは既存のスーパーで30%引きで買い物ができるようにしたらどうか、なんていう話も耳にします。
約115億円もの税金を使って、極々1部の人しか恩恵がないスーパーじゃあ意味がないような気がしてきた、今日この頃です。
まだまだ暑い日が続きそうですが、どうぞお体を大切にされてください。
それではまた次回♫
Kayo
平木かよ / Kayo Hiraki
ニューヨーク在住 2017年より、世界屈指の米国グラミー賞の投票権を持つ。同じく米国スタインウェイ・ピアノ公認アーティスト。現在、グリニッジ・ビレッジのジャズの老舗「Arturo’s」のハウス・ピアニストとして、週に5日、自己のトリオで演奏活動を続けて26年目。ニューヨーカーに、スイングの楽しさを届けている。ベースの巨匠、ロン・カーターとのトリオで、ブルーノート・NYへも出演。JALの国際線機内誌でも、海外で活躍する日本人として大きく取り上げられた。また、舞台「ヴィラ・グランデ青山」では山田優がジャズシンガーに扮するシーンでの、ミスティーのピアノ伴奏。カナダ・トロント・リールハート国際映画祭でブロンズメダルを受賞した映画「Birth Day」への挿入曲提供と共に、ピアニスト役で出演。フランス・パリ日本文化会館での館長招聘コンサートや、台湾にて、最大規模を誇る、台中ジャズフェスティバルへの出場など、世界を股にかけるスイング感あふれる彼女のピアノとボーカルには、定評がある。定期的に、くにたち音楽大学ジャズ専修で講義を持つ。




